1960年代ブリティッシュ・ロックの胎動
映画「ブリティッシュ・ロック誕生の地下室」は、1960年代初頭、ロンドン西部の小さなライブハウス「イーリング・クラブ」に焦点を当て、その地下室のライブハウスからブリティッシュ・ブルース・ロックが胎動し、後の世界的なロックバンドが巣立っていく様を描いたドキュメンタリーです。
ブリティッシュ・ロックの父と呼ばれるアレクシス・コーナーは、60年代初頭「イーリングクラブ」で定期的に「リズム&ブルース・ナイト」を開催するようになります。そこには、シカゴやミシシッピのブルースに密かに憧れをいだく若者たちが集うようになり、やがてローリング・ストーンズ、クリーム、マンフレッドマン、ザ・フーなど、60年代のロックシーンをリードしたブリティッシュ・ロック・バンドが世界へと羽ばたいていきました。
作品の紹介
監督: ジョルジオ・グルニエ
公開日: 2022年11月11日
上映時間: 88分
2022年に公開され、当時はピーター・バラカン氏が取り上げて紹介していたため、そこでこの作品を知った人もいると思います。現在はAmazon Primeで観ることができます。
映画は当時を知るミュージシャンや関係者へのインタビューを中心に構成されるドキュメンタリーになっています。登場するのは次のような面々です。
- ジンジャー・ベイカー(クリーム)
- ジャック・ブルース(クリーム)
- エリック・バードン(アニマルズ)
- ジョン・メイオール(ブルースブレイカーズ)
- ピート・タウンゼント(ザ・フー)
- アレクシス・コーナー(ブリティッシュ・ブルースの父)
- シリル・デイヴィス(ブルース・インコーポレイテッドのメンバー)
- ミック・ジャガー(ザ・ローリング・ストーンズ)
- キース・リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ)
- ブライアン・ジョーンズ(ザ・ローリング・ストーンズ)
- ポール・ジョーンズ(マンフレッド・マンのボーカル)
- ニック・シンパー(ディープ・パープルの初期メンバー)
- マディ・ウォーターズ(アメリカのブルースマン)
- シスター・ロゼッタ・サープ(ブルースとゴスペルの先駆者)
マディ・ウォーターズとシスター・ロゼッタ・サーブはアメリカから招待されて「リズム&ブルース・ナイト」に登場したゲストです。
この映画の最大の魅力は、これら伝説的なミュージシャンたちの貴重な証言の数々です。錚々たる面々が、若き日のイーリング・クラブでの思い出や、ブルースとの出会い、バンド結成秘話などを語ります。彼らの言葉からは、当時のロンドンにおける音楽シーンの熱気や、ブルースへの純粋な憧憬と情熱がひしひしと伝わってきます。
映画は、アレクシス・コーナーがこのクラブに若者たちを集め、シカゴやミシシッピのブルースを熱心に演奏していた様子を描きます。そして、その影響を受けてザ・ローリング・ストーンズ、クリーム、マンフレッド・マン、さらにはザ・フーなど時代を牽引したバンドによるブリティッシュ・ロックの胎動を追体験できます。
しかし残念ながら、当時のイーリング・クラブの映像は残っていないため、映画は主にインタビューと当時の写真、そして関連するアーカイブ映像で構成されています。イーリングクラブでの実際の演奏映像を期待すると少し失望を感じるかもしれません。しかし、当時を知る大物ミュージシャン達のインタビューの肉声は非常に貴重で、それだけでもこの映画を観る価値があると言えます。
この映画の主役とも言えるアレクシス・コーナーについては、別記事で少し詳しく触れているので、そちらも読んでみていただきたい。