1989年ビルボードとその時代

ソ連がアフガン撤退、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、東欧民主化、冷戦の終焉(マルタ会談)、リクルート事件、昭和の終焉、ニルヴァーナ、ニューオーダー、プリンセス・プリンセス、日経平均38,957円。

《連載目次》

1989年は現代史最大の分岐点と呼ばれています。ソ連が10年の歳月を経てアフガニスタンから撤退、中国では天安門事件、ベルリンの壁が崩壊して東ヨーロッパは民主化の嵐。マルタ会議で冷戦の終焉を宣言など、一年の内に文字通り連鎖反応的に事件が連続しました。

日本ではリクルート事件が拡大する中で昭和が終焉して平成を迎えます。

さらに1989年という年は

  • フランス革命から200年。
  • ナチスドイツのポーランド侵攻から50年
  • ウォール街の大暴落、世界恐慌から60年
  • 第一次世界大戦の結末としてのヴェルサイユ条約調印から70年
  • 中国の五・四運動から70年
  • 中華人民共和国、ドイツ連邦共和国(東ドイツ)の成立から40年
  • 米中国交樹立から10年
「1989年 現代史最大の転換点を検証する」竹内修司 より

と、まさに現代史の分岐点と呼ばれるのに相応しい潮目の年でした。

1989年のミュージックシーン

世界の政治は激動の年でしたが、世界のミュージックシーンも分岐点を迎えています。しかし、それは水面下の出来事で、この年の段階ではまだ表面化していません。

80年代後半のミュージックシーンはクラブ・ダンス系を大きな軸として派手で煌びやかなデジタルサウンド+MTVでの見栄えが前面に出ていたわけです。HR/HM系のロックですら、ヴィジュアル重視かつド派手なサウンドという指向は同様でしたし、ポストパンク、ニューウェイブ系のロックはサウンド的な目新しさはあるものの、デジタル+ヴィジュアル路線は結局変わり映えせず、一部のロックファンの間では欲求不満に近いものが鬱積していた感があります。

こうした欲求不満に呼応した90年代の新しいサウンドがムーブメントとして露見してくるのは、もう少し後のことなのですが、インディーズシーンでは「オルタナティブ」なロックが徐々に台頭しつつありました。例えばニルヴァーナがこの年にデビュー、R.E.Mは翌1980年のデビュー、そしてソニックユースは1981年のデビューと続きます。

1989年という時期は、音楽のメディアがレコードからCDへ移り変わる過渡期で、その移り変わりのピークであったといえます。そこで過去に発売された多くの「名盤」がCDとして(場合によってはリミックスされて)再発売されました。必然レコードとCDを合わせた売り上げは大きく伸長していて、このレコード会社の好況がミュージックシーン全体の活況をもたらすことになるわけです。合わせてこのアルバム再発ムーブメントが、若い世代が歴史的な名盤に出会う絶好の機会となります。つまり歴史的な名盤が再カタログ化されて改めて陽の目をみることになりました。。

こうしたことが90年代以降の音楽シーンに大きく影響をあたえたように思えます。それは音楽を聴く層にとっても、音楽を作る層にとっても同様で、特に音楽を作る層の若い世代への影響は非常に大きかったのではないかと推測されます。

1989年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧

アーティスト日付
Every Rose Has Its ThornPoison1/7
My PrerogativeBobby Brown1/14
Two HeartsPhil Collins1/21
1/28
When I’m With YouSheriff2/4
Straight UpPaula Abdul2/11
2/18
2/25
Lost In Your EyesDebbie Gibson3/4
3/11
3/18
The Living YearsMike + The Mechanics3/25
Eternal FlameThe Bangles4/1
The LookRoxette4/8
She Drives Me CrazyFine Young Cannibals4/15
Like A PrayerMadonna4/22
4/29
5/6
I’ll Be There For YouBon Jovi5/13
Forever Your GirlPaula Abdul5/20
5/27
Rock On (From “Dream A Little Dream”)Michael Damian6/3
Wind Beneath My Wings (From “Beaches”)Bette Midler6/10
I’ll Be Loving You (Forever)New Kids On The Block6/17
SatisfiedRichard Marx6/24
Baby Don’t Forget My NumberMilli Vanilli7/1
Good ThingFine Young Cannibals7/8
If You Don’t Know Me By NowSimply Red7/15
Toy SoldiersMartika7/22
7/29
Batdance (From “Batman”)Prince8/5
Right Here WaitingRichard Marx8/12
8/19
8/26
Cold HeartedPaula Abdul9/2
Hangin’ ToughNew Kids On The Block9/9
Don’t Wanna Lose YouGloria Estefan9/16
Girl I’m Gonna Miss YouMilli Vanilli9/23
9/30
Miss You MuchJanet Jackson10/7
10/14
10/21
10/28
Listen To Your HeartRoxette11/4
When I See You SmileBad English11/11
11/18
Blame It On The RainMilli Vanilli11/25
12/2
We Didn’t Start The FireBilly Joel12/9
12/16
Another Day In ParadisePhil Collins12/23
12/30
ビルボードHOT100

1989年のビルボード200による1位のアルバム一覧

アルバムアーティスト日付
Giving You The Best That I GotAnita Baker1/7
1/14
Don’t Be CruelBobby Brown1/21
1/28
2/4
Appetite For DestructionGuns N’ Roses2/11
Don’t Be CruelBobby Brown2/18
2/25
3/4
Electric YouthDebbie Gibson3/11
3/18
3/25
4/1
4/8
Loc-ed After DarkTone-Loc4/15
Like A PrayerMadonna4/22
4/29
5/6
5/13
5/20
5/27
The Raw & The CookedFine Young Cannibals6/3
6/10
6/17
6/24
7/1
7/8
7/15
Batman (Soundtrack)Prince7/22
7/29
8/5
8/12
8/19
8/26
Repeat OffenderRichard Marx9/2
Hangin’ ToughNew Kids On The Block9/9
9/16
Girl You Know It’s TrueMilli Vanilli9/23
9/30
Forever Your GirlPaula Abdul10/7
Dr. FeelgoodMotley Crue10/14
10/21
Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814Janet Jackson10/28
11/4
11/11
11/18
Girl You Know It’s TrueMilli Vanilli11/25
12/2
12/9
Storm FrontBilly Joel12/16
Girl You Know It’s TrueMilli Vanilli12/23
…But SeriouslyPhil Collins12/30
ビルボード200

1989年にリリースされたその他のアルバム

  • ビッグ・ダディ・ケイン『イッツ・ザ・ビッグ・ダディ・シング』[6]
  • V.A. OST『ドゥ・ザ・ライト・シング』
  • ゲイリー・ムーア『アフター・ザ・ウォー』
  • ボブ・ディラン、グレイトフル・デッド『ディラン&ザ・デッド』
  • ロイ・オービソン『ミステリー・ガール』
  • エルヴィス・コステロ『スパイク』
  • ニュー・オーダー『テクニーク』
  • クイーン『ザ・ミラクル』

1989年のミュージック・ライフ人気投票

  1. ガンズ・アンド・ローゼス
  2. スキッド・ロウ
  3. ボン・ジョヴィ
  4. モトリー・クルー
  5. ハノイ・ロックス

1989年のぴあテン音楽

  1. プリンセス・プリンセス
  2. 松任谷由実
  3. 米米クラブ
  4. 渡辺美里

1989年の世界の出来事

1月7日 – 午前6時33分に昭和天皇が崩御、皇太子明仁親王が第125代天皇に践祚。日本の元号「昭和」の最後の日となった。
1月8日 – 元号「平成」が始まる。
1月20日 – ジョージ・H・W・ブッシュが、第41代アメリカ合衆国大統領に就任。
2月15日 – ソ連軍のアフガニスタン撤退が完了。
3月26日 – 史上初のソビエト連邦人民代議員大会議員選挙挙行、ソビエト共産党が敗北を喫する。
4月1日 – 日本で消費税が導入される。
6月2日 – リクルート事件で竹下内閣総辞職
6月4日 – 北京で天安門事件が起きる。
10月14日 – 田中角栄元総理、衆議院議員引退を表明。
10月23日 – ハンガリー人民共和国が社会主義体制を完全に放棄し、ハンガリー共和国に。
10月31日 – 三菱地所がアメリカのロックフェラー・センターを買収。
11月6日 – 第1回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議がキャンベラで開催される。
11月10日 – ベルリンの壁崩壊。ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
11月24日 – チェコスロバキアでビロード革命。共産党政権が崩壊。
12月1日 – 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
12月3日 – アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ最高会議議長がマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言(マルタ会談)。
12月20日 – 米軍パナマ侵攻。
12月29日 – 日経平均株価が史上最高値の38,957円44銭(同日終値38,915円87銭)を記録。