マリーナ・ショウ/ Who Is this Bitch, Anyway?

Marlena Shaw、マーリナ・ショウという表記も、70s Soul、70年代ニューソウル、「いとしのエリー」、松任谷正隆、チャック・レイニー、デイヴィッド・T・ウォーカー、ラリー・カールトン、ハーヴィー・メイソン

先日(2024年1月19日)にマリーナ・ショウの訃報がニュースで流れました。実力派のジャズ・シンガーにして70年代ソウルを代表する一人でした。日本にも何度も来ており最後となるツアーは2016年で、宮崎の他、東京都大阪のビルボード・ライブで歌声を披露しました。

特に 1975年のアルバム「Who Is This Bitch, Anyway?」は名盤中の名盤としてあまりにも名高いものです。


フー・イズ・ジス・ビッチ、エニウェイ? [ マリーナ・ショウ ]

日本のアーティストたちに与えた影響も数知れず、例えば、松任谷正隆氏は「死ぬほど聴いた名盤」とインタビューで語っているし、アルバムの2曲目に収められた”You Taught Me How to Speak in Love”は、サザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」の誰が聞いても明らかな元歌になっています(パクリというよりはリスペクトをもって原曲をなぞっています)。

70年代後半の日本では、プロ、ソウル・ブルース・ブラックコンテンポラリ系の音楽を志向する者であればプロ・アマを問わずこのアルバムを「お手本」というか定番の参照点として愛聴していたものです。筆者もご多聞に漏れずで、本当に懐かしいアルバムなのですが、改めて聴き返すとその充実した完成度に少しばかり驚きます。

マリーナ・ショウ略歴

1942年ニューヨーク出身。叔父であるトランぺッターのジミー・バージェスから影響を受けて、ディジー・ガレスピーやマイルス・デイヴィスのレコードに親しむようになります。10歳の時にアポロシアターで歌う機会を得て好評だったのですが、母親が音楽の道に進むことに難色を示しニューヨーク州立の師範大学へ進学します。しかし結局大学は中退、ニューイングランドを中心にハワード・マクギーが率いるバンドで活動することになります。

1966年になるとチェスレコードとの契約に成功し参加のカデットレコードから「Mercy, Mercy, Mercy」をリリースします。これは好調なセールスを得ることになり、カデットからは2枚のアルバムをリリースすることができました。このアルバムで注目された彼女は、カウント・ベーシーのバンドシンガーとしてしばらくの間を過ごします。

1972年にはブルーノート・レコードに移籍。ブルーノートと契約した最初の女性ヴァーカリストとなりました。そしていよいよ1975年にリリースした「Who Is this Bitch, Anyway?」は歴史的な名盤として名を残すことになります。

Who Is this Bitch, Anyway?

チャック・レイニーのベースにハーヴィー・メイソンのドラム、デヴィ・Tとラリー・カールトーンのギターというのは当時でも垂涎のリズムセクションでした。まだデジタル録音技術が普及する前の時代、シンガーもプレイヤーも生身の裸で真剣勝負していた時代のゴージャスな演奏が堪能できます。アレンジを担当しているのは、Benard Ighner(シンガー)やDale Oehler(ピアニスト)などクインシー・ジョーンズ界隈の人たち。因みにプロデュースもBenard Ighner。この人は60年代にディジー・ガレスビーのグループで活躍していたシンガーでコンポーザーとしても活動していました。

松任谷正隆の言葉を借りてしまうと「都会的なR&Bです。汗を感じない、風のような音楽」となります。桑田佳祐が思わずパクりたくなったのもうなづけます。サウンド自体は確かに汗を感じない爽やかなものでしたが、シンガーとしての存在感とそのメッセージ性はむしろ堂々たる威圧感を内に秘めたものでした。

余談としてついでに書いてしまうと、筆者も当時やっていたバンドで8. Loving You Was Like A Partyのコード進行を臆面もなく丸ごとバクった気恥ずかしい思い出があったりします。

バックのサウンドの話ばかりになってしまいましたが、このアルバム、実力派シンガー・マリーナ・ショウの実力を支えにしてジャズとソウルを自在に行き来しながら、今日的にいうなら「フェミニスト」としての存在感を湛えたカリスマを感じさせずにはおれない、独自の世界観を繰り広げています。

例えばカバー曲 4.Feel Like Makin’ Loveは、オリジナルのロバータ・フラック版を完全に凌駕してしまっている、といったら怒られるかもしれません。しかし、しっとりと始まった曲が次第に熱を帯びたグルーヴの渦となっていく様は絶品で正に珠玉の名作。この曲だけでも若い人たちに聴いてほしいと思うのです。この人の歌声はキャリアを通して常に力強く説得力に溢れるものでした。

1a. Dialogue: You, Me And Ethel
1b. Street Walkin’ Woman
2. You Taught Me How To Speak In Love
3. Davy
4. Feel Like Makin’ Love
5. The Lord Giveth And The Lord Taketh Away
6. You Been Away Too Long
7. You
8. Loving You Was Like A Party
9. A Prelude For Rose Marie
10. Rose Marie (Mon Cherie)

Guitar – David T. Walker (tracks: 1.b to 3, 5, 8)
Guitar – Dennis Budimir (tracks: 3, 6 to 7, 10)
Guitar – Larry Carlton (tracks: 2, 4, 8)
Bass – Chuck Domanico (tracks: 10), Chuck Rainey (tracks: 1.b to 4, 6 to 8)
Congas – King Errison (tracks: 1.b, 8)
Drums – Harvey Mason (tracks: 1.b to 4, 6 to 8), Jim Gordon (tracks: 10)
Electric Piano – Larry Nash (tracks: 1.b to 2, 4, 6 to 8)
Flugelhorn – Bernard Ighner (tracks: 3)
Percussion – Harvey Mason (tracks: 2, 6)
Piano – Bernard Ighner (tracks: 4), Bill Mays (tracks: 10), Marlena Shaw (tracks: 5), Mike Lang (tracks: 1.b to 2)
Wind Chimes – Harvey Mason (tracks: 4)
Arranged By – Bernard Ighner (tracks: 3 to 5), Byron Olson (tracks: 1.a to 2, 9 to 10), Dale Oehler (tracks: 6 to 8)
Engineer – Phil Shier
Mixed By – Joanie DeCola, Phil Shier
Producer – Bernard Ighner

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