Gratitude / Earth, Wind & Fire

Africano~Power, Sing a Song, Reason, Can't Hide Love

EW&Fがリリースした70年代で唯一のライブアルバム。リリースは1975年の11月。ビルボード200チャートで3週間の間1位を獲得、トップ・ソウル・アルバム・チャートでは6週間にわたって1位だった。

ライブ・アルバムではあるが、一部(アナログ盤ではD面にあたる)がスタジオ録音という変則的な構成になっている。ライブ録音は、1974年から75年にかけて行われた全米ツアーの模様が収められており、モーリス・ホワイトとチャールズ・ステップニーによる共同プロデュースとなっている。

オープニングのジャムセッション的に始まるAfricano~Powerのメドレーから、大胆なアレンジとホーンズがリードするド派手な仕掛けを次々に決めていく様は、今でも十二分な聴きごたえがある。

シングルカットされた「Sing a Song」は、ビルボードのHOT100では5位、同ソウルチャートでは1位を獲得した。もう1曲シングルカットされた「Can’t Hide Love」は、ソウルチャートで最高11位だった。疾走感のあるライブと対照的に、スタジオ録音の方は後のEarthのヒット曲につながるポップな秀作が揃っている。

EW&Fの日本での知名度が上がったのは70年代後半ディスコブーム以降のことなので、75年の時点では当時の「クロスオーバー」ムーブメントの中で少々話題になる、という程度の知名度だった。それでも、その「クロスオーバー」ムーブメントの中においては、本アルバムのインパクトは絶大であり、ほぼ同時期のマイルス・デイヴィスのライブ・アルバム「アガルタ」とほぼ並行に共振しながら、当時においての「アフリカ・セントリズム」が音楽シーンにおける大きな流れをリードした。アフリカ・セントリズムは、特にこの時代のアメリカのブラック・ミュージックにおいて、そのルーツであるアフリカ音楽をプライドを持って強調する、という流れで「アフリカ中心主義」などといういい方もされた。

ディスコ以降の80年代のEW&Fは、極めて完成度の高いアルバムから次々とヒット曲を繰り出して「ファンク・ヒット・マシーン」と呼ばれて、押しも押されもせぬ存在となった。そのイメージからすると、本アルバムのサウンドはやや「勢いにまかせた」荒々しいものにも感じるが、若さの絶頂に達していたフィリップ・ベイリーの神々しいファルセットが示すように、初期の一つの絶頂を体現していた。炸裂するアフリカンブラス:フェニックスホーンの饗宴の後でのバラード「Reasons」は、今聴いても何度聴き返してもその都度鳥肌が立つ。

75年と言えばStevie WonderのKey Of Lifeもこの年のリリースなわけで、音楽シーンの地殻変動をひしひしと感じながら、当時の音楽ファン達の感性が「アフリカ・セントリズム」に鷲掴みにされていたのを思い出す。

いったい何処へ行くのか、何処へ連れていかれるのか、という期待に胸が膨らんでいたものだが、その後数年たって我々が連れていかれたのは、なんと、「おバカ」が踊りやすいというだけが取り柄、という陳腐なダンスミュージックの流行だった。ディスコブームが当時の我々に与えた救いようのない絶望感を前にしてどれだけ寂しかったことか。ついでに不貞腐れて「Funkは死んだ」などと言ってみたが、

でも、言うまでもなくFunkは死ななかった。

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