Snarky Puppy スナーキー・パピー

ダラス、マイケル・リーグ、RHファクター、キース・アンダーソン、ボビー・スパークス、バーナード・ライト、ジェイソン・JT・トーマス

Snarky Puppyはベーシストのマイケル・リーグが率いるアメリカのジャズ・フュージョンバンド。2004年に結成されて以来グラミー賞を5回受賞したのを始めとして、各方面から非常に高い評価を受けてきた。

マイケル・リーグが北テキサス大学在学中に10人編成のバンドとしてスタートした。当初は北テキスト大学の学生を中心にして、その後およそ30名前後のメンバーが流動的に参加してきた。このためスナーキー・パピーはバンドというよりも集団/共同体(Collective)と呼ばれることがある。彼らへの賛辞の中には「世界最高の即興音楽集団」なんていうのまであり少し大げさにも思われるが、彼らが実力派として認められていることは間違いない。

ところで北テキサス大学は総合大学だが、そのジャズ科は最も古くからの歴史があり、権威のあるプログラムで知られている(例えば、有名どころの卒業生ではではノラ・ジョーンズがいる)。そのため、スナーキー・パピーのメンバーもエリート集団、と呼ばれることがある。

グラミー賞

スナーキー・パピーが最初に高い評価を受けたのは2013年にリリースされた「Family Dinner vol.1」だった。これは1曲ごとに違うヴォーカリストをゲストに迎えるという企画のライブ・レコーディングだったのだが、この中からLalah Hathawayのがカバーした”Something”(Brenda Russell)がグラミーのベストR&Bパフォーマンスに選ばれた。このレコーディングはスタジオに観客を入れた文字通りのスタジオライブで、その模様もYouTubeで公開されて大きな話題となった。スタジオで参加した観客もその映像も音楽作品の一つの要素というわけだ。

2013 Best R&B Performance, “Something”
2015 Best Contemporary Instrumental Album, Sylva
2016 Best Contemporary Instrumental Album, Culcha Vulcha
2021 Best Contemporary Instrumental Album, Live At The Royal Albert Hall
2023 Best Contemporary Instrumental Album, Empire Central

またグラミー賞以外でも、ジャズタイムズ、ダウンビートの両誌におけるリーダーズ・ポールを何度も獲得している。

2013 Best Electric/Jazz-Rock/Contemporary Group/Artist, JazzTimes Readers’ Poll
2013 Best New Artist, JazzTimes Readers’ Poll
2015 Best Electric/Jazz-Rock/Contemporary Group/Artist, JazzTimes Critic’ Poll
2015 Jazz Group of the Year, DownBeat Readers’ Poll
2016 Jazz Group of the Year, DownBeat Readers’ Poll
2016 Best Electric/Jazz-Rock/Contemporary Group/Artist, JazzTimes Readers’ Poll
2017 Best Electric/Jazz-Rock/Contemporary Group/Artist, JazzTimes Readers’ Poll
2017 Jazz Group of the Year, DownBeat Readers’ Poll
2018 Best Electric/Jazz-Rock/Contemporary Group/Artist, JazzTimes Readers’ Poll
2019 Jazz Group of the Year, DownBeat Readers’ Poll

スナーキーパピーのメンバー

スナーキーは大所帯でそのメンバーも流動的だが、最近作「Empire Central」に参加したメンバーを挙げておく。

  • Zach Brock – violin
  • Chris Bullock – tenor saxophone, bass clarinet, flute
  • Jay Jennings – trumpet, flugelhorn
  • Bob Lanzetti – electric guitar
  • Bill Laurance – Fender Rhodes Mark 8, Yamaha CP70, Minimoog Model D
  • Michael League – electric bass, Minimoog Model D bass
  • Mark Lettieri – electric guitar
  • Larnell Lewis – drum set
  • Mike “Maz” Maher – trumpet, flugelhorn
  • Shaun Martin – talkbox, vocoder, Moog Little Phatty, Korg Kronos, Mellotron
  • Chris McQueen – electric guitar
  • Keita Ogawa – percussion
  • Bob Reynolds – tenor saxophone, soprano saxophone
  • Jamison Ross – drum set
  • Bobby Sparks II – Hammond B3 organ, ARP String Ensemble, Minimoog Model D, Hohner D6 Clavinet
  • Justin Stanton – Wurlitzer, Prophet 10, Minimoog Model D, trumpet
  • Jason “JT” Thomas – drum set
  • Nate Werth – percussion
  • Marcelo Woloski – percussion

ギターのMike Lettieriについては、前の記事でも紹介しているので読んで欲しい。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのコリー・ウォンと一緒にThe Fearless Flayersというユニットを結成するなど活躍が目立つ。

Mark Lettieri

小川慶太(パーカッション)

メンバーの中で唯一日本人として参加している小川慶太について紹介しておく。

小川慶太は長崎出身のパーカッション・プレイヤー。2005年に渡米してバークレイ音楽学院でパーカッションを専攻。2016年(17年?)にスナーキーに参加した。また、スナーキーのリーダー、マイケル・リーグが立ち上げた別プロジェクトであるBOKANTÉにも参加している。BOKANTÉは、アフリカは元より中東、アラブの民族音楽と民族楽器をベースにした「グローバル・ミュージック」などと呼ばれており、こちらでも2024年のグラミー賞でBest Global Albumにノミネートされている。

ダラス、RHファクター

スナーキー・パピーは、前述のように北テキサス大学の学生を中心として結成され、ダラスを拠点として活動していた。このためダラスの音楽シーンの人脈に深く根ざしており、特にRHファクターと強いつながりを持っている。

スナーキーに参加したメンバーの内でBernard Write(Keyboard), Jason “JT” Thomas(Drum), Boby Sparks (Keyboard)はRHファクターのレコーディングにも参加しており、特にSparksはRHファクターのオリジナルメンバーでもある。

スナーキーのリーダーであるマイケル・リーグによれば、ダラスにはブラック・アメリカンのコミュニティがあり、その中でも特にブラック・ミュージックのコミュニティが非常に強いこと。そして、それらはブラック・チャーチの伝統を深く引き継いでおり、彼はそこから大きな音楽的影響を受けたと語っている。

スタジオアルバム

2022年までに以下の12枚のスタジオアルバムをリリースしている。そのうち7枚は、スタジオに観客を入れてスタジオ・ライブ・レコーディングを行う、というユニークな方法をとっている。先にも述べたが、最初にグラミー賞を獲得した「Family Dinner vol.1」所収の”Something”もこの形式でのスタジオライブレコーディングだった。スタジオライブの一発録音で基本的にポストプロダクションなしというのは、一切のごまかしも修正もきかないということで、彼らの不敵なまでの自信をよく現わしている。

  • The Only Constant (Sitmom, 2006)
  • The World Is Getting Smaller (Sitmom, 2007)
  • Bring Us the Bright (Sitmom, 2008)
  • Tell Your Friends (Ropeadope, 2010)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • groundUP (GroundUP, 2012)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • Family Dinner – Volume 1 (Ropeadope, 2013)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • We Like It Here (Ropeadope, 2014)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • Sylva with Metropole Orkest (Impulse!, 2015)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • Family Dinner – Volume 2 (GroundUP, Universal Music Classics, 2016)
    ※有観客ライブ・レコーディング
  • Culcha Vulcha (GroundUP, 2016)
  • Immigrance (GroundUP, 2019)
  • Empire Central (GroundUP, 2022)
    ※有観客ライブ・レコーディング

2016年のCulcha Vulchaと2019年のImmigranceでは、普通のスタジオ録音でポストプロダクションにもこだわりを見せていた彼らだが、2022年のEmpire Centralでは再び有観客ライブ・レコーディングに戻ってきた。

ライブレコーディング

  • Live at Uncommon Ground (self-release, 2005)
  • Live at the Royal Albert Hall (GroundUP, 2020)
  • Live at GroundUP Music Festival (GroundUP/Spotify, 2022)
  • Live Events with guest artists

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