1971年のビルボード100で1位になった曲のリストを眺めながら、その年の世界と日本の出来事を振り返ります。
1971年は何といってもニクソンショックが世界が翻弄した年でした。この年のニクソンショックは実は2回あって一つ目は8月のドルショック、二つ目は翌1972年の訪中です。一般には8月のドルショックが「ニクソンショック」として記憶されているような気がします。
ドルショックは、1971年にニクソンが行った経済政策のことを指します。それまでのドルを中心にした金本位制から、為替相場の変動が主導する現代の通貨体制へ移行することになります。ドルの価値を市場に委ねる時代の始まりです。ニクソンショックは、世界中の通貨体制に大きな影響を与えました。ドルの価値変動は、各国の輸出入や国際間の取引に重大な影響を及ぼしました。ニクソンがこれを強行した背景にはベトナム戦争による米国経済の深刻なひっ迫があります。
もう一つの訪中によるニクソンショックの中心人物はキッシンジャーです。彼は、冷戦の緊張緩和と世界秩序の回復のため、バランスを重視した「勢力均衡」の理論に沿って外交を行いました。これがキッシンジャー外交と呼ばれこの後の世界情勢を方向付けます。
1971年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧
年間チャートの1位はスリー・ドッグ・ナイトの「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」
曲 | アーティスト | 日付 |
マイ・スウィート・ロード My Sweet Lord | ジョージ・ハリスン | 1/2 1/9 1/16 |
ノックは3回 Knock Three Times | ドーン | 1/23 1/30 2/6 |
ワン・バッド・アップル One Bad Apple | オズモンズ | 2/13 2/20 2/27 3/6 3/13 |
ミー・アンド・ボビー・マギー Me and Bobby McGee | ジャニス・ジョプリン | 3/20 3/27 |
ジャスト・マイ・イマジネーション (ランニング・アウェイ・ウィズ・ミー) Just My Imagination (Running Away with Me) | テンプテーションズ | 4/3 4/10 |
ジョイ・トゥ・ザ・ワールド Joy to the World | スリー・ドッグ・ナイト | 4/17 4/24 5/1 5/8 5/15 5/22 |
ブラウン・シュガー Brown Sugar | ローリング・ストーンズ | 5/29 6/5 |
希望に燃えて Want Ads | ハニー・コーン | 6/12 |
イッツ・トゥー・レイト / 空が落ちてくる It’s Too Late / I Feel the Earth Move 両A面 | キャロル・キング | 6/19 6/26 7/3 7/10 7/17 |
嘆きのインディアン Indian Reservation (The Lament of the Cherokee Reservation Indian) | レイダース | 7/24 |
きみの友だち You’ve Got a Friend | ジェームズ・テイラー | 7/31 |
傷心の日々 How Can You Mend a Broken Heart | ビージーズ | 8/7 8/14 8/21 8/28 |
アンクル・アルバート〜ハルセイ提督 Uncle Albert/Admiral Halsey | ポール&リンダ・マッカートニー | 9/4 |
ゴー・アウェイ・リトル・ガール Go Away Little Girl | ダニー・オズモンド | 9/11 9/18 9/25 |
マギー・メイ / リーズン・トゥ・ビリーヴ Maggie May / Reason to Believe | ロッド・スチュワート | 10/2 10/9 10/16 10/23 10/30 |
悲しきジプシー Gypsys, Tramps & Thieves | シェール | 11/6 11/13 |
黒いジャガーのテーマ Theme from Shaft | アイザック・ヘイズ | 11/20 11/27 |
ファミリー・アフェア Family Affair | スライ&ザ・ファミリー・ストーン | 12/4 12/11 12/18 |
心の扉をあけよう Brand New Key | メラニー | 12/25 |
シングルチャートではロック勢は目立ちませんが、この年リリースのアルバムを見ると
サンタナ/サンタナIII
ジャニス・ジョプリン /パール
スライ&ザ・ファミリー・ストーン /暴動
オールマン・ブラザーズ・バンド /フィルモア・イースト・ライヴ
シカゴ /シカゴ・アット・カーネギー・ホール
フォーカス /ムーヴィング・ウェイヴス
フェイセズ /ロング・プレイヤー
ハンブル・パイ /パフォーマンス〜ロッキン・ザ・フィルモア
ディープ・パープル /ファイアボール
レッド・ツェッペリン /レッド・ツェッペリン IV
ピンク・フロイド /おせっかい
エマーソン・レイク・アンド・パーマー /展覧会の絵
イエス /こわれもの
という具合で新しいロックの時代が全盛の様相です。この中には名盤として記憶されているものもあり、それは新しいロックの記念碑と呼べるかもしれません。
1971年の日本の音楽
シカゴ、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、グランド・ファンク・レイルロードが初の日本公演を行いました。これらの日本公演の一部はテレビの地上波でも放映され(!)、ロックの時代を感じさせました。一方でタイガースは解散してグループサウンズの時代は終わりを迎え、かわりにメッセージ性の強いフォークソングのブームとなります。
南沙織、小柳ルミ子、天地真理がこの年にデビューしました。ティーンエイジャー向けの歌謡曲が登場し始めました。ロック、フォーク、ティーン向け歌謡曲と、10代をターゲットにしたマーケットが成立し始めた時代だったと言えます。これは日本の経済成長が成熟期を迎え、経済的に豊かなティーンエイジャー層が出現し、彼ら(ベビーブーマー)が既に社会を動かす重要なファクターになったことを意味します。
オリコンチャートの洋楽
12位 ビージーズ:「小さな恋のメロディ」
16位 マッシュマッカーン:「霧の中の二人」
22位 ジェリー・ウォレス:「男の世界」
24位 アンディ・ウィリアムス:「ある愛の詩」
30位 エルヴィス・プレスリー:「この胸のときめきを」
34位 ショッキング・ブルー:「悲しき鉄道員」
35位 フランシス・レイ・オーケストラ:「ある愛の詩」
38位 ジョージ・ハリスン:「マイ・スウィート・ロード」
43位 ポール・マッカートニー:「アナザー・デイ」
世界の出来事
- 1月15日 – アスワンダムの公式開通。
- 1月25日 – ウガンダでクーデター、アミン将軍が権限掌握。
- 2月8日 – 南ベトナム軍がラオスに侵攻。
- 2月11日 – 海底軍事利用禁止条約を各国が調印。
- 3月5日 – パキスタン軍が東パキスタンを占領。
- 3月8日 – FBI支局が違法な監視活動を記した記録書類が盗難にあう。
- 3月12日 – ハーフィズ・アル=アサド、シリア大統領に就任。
- 3月14日 – インド総選挙。ガンジー率いる国民会議派が勝利。
- 3月25日 – バングラデシュ独立宣言。
- 4月 – 自動車などの6業種の資本自由化実施。
- 4月1日 – アメリカでテレビ・ラジオ放送でのタバコのCMが全面的に禁止に。
- 4月19日 – ソビエト連邦、世界初の宇宙ステーション・サリュート1号打ち上げ。
- 5月9日 – 西ドイツマルクが変動相場制に移行。
- 5月10日 – オランダが変動相場制に移行。
- 5月26日 – オーストリアと中華人民共和国、外交関係を樹立。
- 5月27日 – ソ連とエジプト、友好協力条約を調印。
- 6月1日 – ブラジル、領海200カイリを宣言。
- 6月13日 – 国防総省のベトナム秘密報告書をニューヨーク・タイムズが入手し、紙面に連載開始。のちに「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれる。
- 6月30日 – ソ連の宇宙船ソユーズ11号で空気漏れ事故が発生。乗員3人全員が死亡。
- 7月9日 – キッシンジャー米大統領補佐官が中国を極秘訪問。
- 8月9日 – インドとソ連、平和友好協力条約を調印。
- 8月14日 – バーレーン、イギリスからの独立を宣言。
- 8月15日 – ニクソン・ショック(アメリカが金とドルの交換停止)。
- 8月22日 – ボリビアでクーデター、ウゴ・バンセル・スアレス大佐が大統領に就任。
- 8月25日 – ウガンダ・タンザニア国境で武力衝突。
- 9月1日 – カタールが独立。
- 9月8日 – 中国の林彪がクーデター失敗、搭乗飛行機の墜落死。
- 10月1日 – アメリカのフロリダ州オーランドにウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートが開園。
- 10月25日 – 中華人民共和国が国連加盟。台湾(中華民国)は事実上の追放。
- 10月27日 – コンゴ民主共和国が国名をザイール共和国に変更。
- 11月6日 – アムチトカ島で米国が地下核実験。
- 11月10日 – カンボジア:クメール・ルージュがプノンペン市街と空港を攻撃。44人が死亡。
- 11月17日 – タイで戒厳令、軍政が復活。
- 11月24日 – アメリカでハイジャック「D.B.クーパー事件」発生。犯人は身代金20万ドルを持ってパラシュートで脱出、逃亡。未解決事件となる。
- 11月27日 – ソ連の火星探査機マルス2号が火星にハードランディング。
- 12月2日 – アラブ首長国連邦、七首長国により建国。
- 12月3日 – 第三次印パ戦争。翌日インド、東パキスタンに侵攻。
- 12月16日 – 東パキスタン内のパキスタン軍降伏。第三次印パ戦争、実質的に終わる。
- 12月18日 – 10ヶ国蔵相会議、通貨の多国間調整で合意(スミソニアン体制発足)。
日本の出来事
- 4月7日 – 愛知県名古屋市で開催の世界卓球選手権に参加の中国代表が、アメリカ代表チームを中国に招待すると発表。10日アメリカチームが北京に到着(米中ピンポン外交)。
- 6月17日 – 日米政府間で沖縄返還協定の調印式挙行。
- 7月3日 – ばんだい号墜落事故
- 7月30日 – 全日空機雫石衝突事故
- 7月20日 – マクドナルドの日本第1号店が銀座三越の1階にオープン。
- 7月31日 – 加賀市沖不審船事件。
- 8月1日 – 第13回世界ジャンボリーが静岡県富士宮市の朝霧高原で開催された。
- 8月28日 – 円変動相場制移行。
- 9月27日~10月11日 – 昭和天皇・香淳皇后夫妻、ヨーロッパ7カ国(ベルギー、イギリス、ドイツ、デンマーク、フランス、オランダ、スイス)を行幸啓(訪問)。
- 10月2日 – 横綱大鵬が引退。優勝32回、45連勝など圧倒的な強さと甘いマスクで熱狂的な人気を呼んだ。父はウクライナ人。
- 10月16日 – 第67回臨時国会( – 12月27日)は日本政府とアメリカ政府間の沖縄返還協定批准をめぐる審議に費やされ「沖縄国会」と呼ばれた。
- 11月19日 – アメリカ政府との沖縄協定基準に反対する第2波全国運動が日比谷公園で開催。その運動に参加していた過激派の学生が投じた火炎瓶が松本楼を直撃・全焼する事件が発生。
- 10月21日 – アメリカ政府との沖縄協定基準に反対する第1波全国運動が日比谷公園で開催。