スウィートホームシカゴはカリフォルニア??

ロバート・ジョンソンのSweet Home Chicagoには元になる曲がいろいろあることが知られています。といいますか、ブルースの場合、メロディや歌詞のオリジナリティはあまり問題にならないし、コード進行も大体似たり寄ったりですから、元になる曲にその人なりの味を加えて持ち歌にするのが普通です。そういうわけで”Honey Dripper Blues”、”Red Cross Blues”、”Kokomo Blues” etc… 。特に “Kokomo Blues”は直接的な元歌だと言われています。

他にもLEROY CARR – Baby Don’t You Love Me No Moreという曲があって、むしろこちらが直接の元歌という気もします。リロイ・カー(Leroy Carr、1904年3月27日 or 1905年4月29日 – 1935年)はブルースシンガーでピアニストで、そのスタイルはナット・キング・コールやレイ・チャールズといったアーティストにも影響を与えました。1928年にヴォーカリオン・レコードからリリースされたデビュー作「How Long, How Long Blues」でその名を売りました。

ロバート・ジョンソンはリロイ・カーにかなりの影響を受けており、ピアノのブギスタイルをギターで真似ようとした、と考えられています。デルタにありながらどこか都会的なジョンソンのセンスはこのあたりから持ってきたのか、とも思わせます。

1936年11月23日、ジョンソンがこの曲を録音した時、”back to Kokomo”を”back to Chicago”と置き換え、”that eleven light city”を”That land of California”と置き換えました、

But I’m cryin’ hey baby, Honey don’t you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

これが後に論争を呼ぶことになりました。

  • ジョンソンは単に地理にうとくて間違えただけ、という説。
  • あるいは、CaliforniaとChicagoは、憧れの都市の比喩的な表現に過ぎない、とするもの。ミシシッピデルタ特有の人種差別や貧困から逃れたユートピア都市のイメージなのだ、というのもありますが、これはさすがに「こじつけ」がひどい気もします。
  • これはシカゴのカリフォルニア・アベニューへの言及であるいう説もあり、これはもっともらしいのでで有名です。カリフォルニア・アベニューは、シカゴ市の南端から北端まで続く大通りなのだそうです。
  • カリフォルニアに行った後、国中をぐるっとまわって最後にシカゴへ行くのだ、という説。これは少し笑えるかもです。
  • ゴロがよくてピタッとはまる都市の名前だったらなんでもよかった、要するに適当。というのが私の個人的な説です。

さて、この曲はたくさんの人たちにカバーされるうちに、問題の歌詞も適当にごまかされて辻褄あわせが行われます。”back to the land of California” は、”back to the same old place”に”I’m going to California” は”I’m going back to Chicago”に。といった具合です。

因みにジョンソンを深くリスペクトするEric Claptonは、”Selection from Sessions of Robert J”所収のSweet Home Chicagoで、ジョンソンのオリジナル通りに”Back to the land of California, to my sweet home Chicago“で歌っています。さすがです。

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