マイルス・デイヴィスと演奏を共にしたギタリストを一気に紹介します。John McLaughlin, Cornell Dupree, Reggie Lucas, Pete Cosey, Dominique Gaumont, Barry Finnerty, Mike Stern, John Scofield, Michael Landau, Jean-Paul Bourelly, FOLEY, Randy Hall。
ここで紹介した他にもHiram Bullock、Robben Ford、Dewayne “Blackbyrd” Mcknightなど、マイルスのライブで演奏したギタリストはいるのですが、ここで紹介するのはアルバムのレコーディングに参加してクレジットされているギタリスト12人です。
実はこの前にも、1967年にはJoe Beck、1968年にはGeoge Bensonが「Miles In The Sky」に参加しています。Bensonは、「Miles In The Sky」の中の1曲”Paraphernalia”でギターソロをとっており、マイルスの歴史の中で初のギターソロ・フューチャーということになっています。しかし、これらのギターフィーチャーは、John McLaughlin以降のブラック・ファンク・ロック路線とは明らかに異なるものです。
マイルスと極めて所縁の深いジミ・ヘンドリックスについては以下の記事もご覧ください。
John McLaughlin
ジョン・マクラフリン(1942年1月4日 – )
エレクトリック・マイルス期(=電気楽器を積極的に使用したファンク・ロック的なサウンドへの移行期)の中心メンバーと言っても過言ではないギタリストです。そのプレイスタイルは独自でよく「誰にも似ていない」と形容されていました。
1969年に渡米してトニー・ウィリアムスの”ライフ・ライム”に参加、そのライブを見たマイルス・デイヴィスから誘いを受けてレコーディングに参加することになります。2月18日には早速レコーディングを行っています。つまり渡米直後にいきなりの大抜擢なわけです。同じ1969年の3月にはニューヨークのクラブ「The Scene」でジミ・ヘンドリックスとジャム・セッションを行っていおり、これは伝説になっています。
参加したアルバム
- In a Silent Way,
- Bitches Brew,
- Jack Johnson,
- Live-Evil,
- On the Corner
Cornell Dupree
実はコーネル・デュプリーも1曲だけマイルス・デイヴィスのアルバムに参加しています。
参加したアルバム
Get Up with It(1974)の”Red China Blues”
Reggie Lucas
レジー・ルーカス (1953年2月25日 – 2018年5月19日)
ピート・コージーと共にマイルスのグループに参加、マイルスに言わせると「白人ギタリストにはできない」リズム・ギター・プレイで活躍します。マイルスのグループの後にはマドンナのアルバムのプロデュースなども手掛けています。
参加したアルバム
- On The Corner (1972)
- In Concert: Live at Philharmonic Hall (1973)
- Dark Magus (1974)
- Get Up With It (1974)
- Agharta (1975)
- Pangaea (1976)
- The Complete Miles Davis at Montreux (2002)
- The Complete On the Corner Sessions (2007)
- Miles Davis at Newport 1955-1975: The Bootleg Series Vol. 4 (2015)
Pete Cosey
ピート・コージー (October 9, 1943 – May 30, 2012)
この人のことは 別の記事 で少し触れました。マイルスと行動を共にしたギタリストの中でも特に異彩を放つ人です。変則チューニングから絞り出すブルースは極めてユニークで強烈な個性を持っています。
参加したアルバム
- Get Up with It (1974),
- Agharta (1975),
- Pangaea (1976),
- Dark Magus (1977),
- The Complete On the Corner Sessions (2007).
Dominique Gaumont
ドミニク・ゴーモン
フランス人ギタリストで、マイルズ・デイヴィスのグループの他では、アートアンサンブルオブシカゴやミシェル・ポルタルとも共演しています。。自らジミ・ヘンドリックスからの強い影響を公言しています。
参加したアルバム
- Get Up With It
- Dark Magus
- The Complete On the Corner Sessions (2007)
Barry Finnerty
バリー・フィナティ
The Man with the Hornのレコーディングに参加し、ツアーにも出る予定でリハーサルをしていましたが、フィナティが弾いたコードをマイルスが気に食わず、止めるように指示したにもかかわらず弾くのを止めなかったため、激怒したマイルスが頭から炭酸水をぶちまける、という凄まじい事件があってバンドを止めてしまいます。
参加したアルバム
The Man with the Horn
Mike Stern
マイク・スターン
ビリー・コブハムのバンドでプレイしている時に、ビル・エヴァンス(サックス奏者)の紹介でマイルス・グループに参加します。本人の弁によればマイルスからは常に「ジミ・ヘンドリックスのようにプレイしろ」と指示されていたそうです。実際「ロック的」なプレイで弾きまくっているのですが、マイルスの側ではスターンのプレイがあまりにも「ロック的」過ぎることに不満を持っていたことが当時の発言から伺えます。マイルスが否定的な意味で言うところの「ロック的」というのは「白人的なプレイ」であることは明白です。同時期にジョン・スコフィールドがプレイしていますが、同じ白人ギタリストでもスコフィールドの方がよりブルージーであるというのがデイヴィスの評価のようです。
参加したアルバム
- The Man With the Horn
- We Want Miles
- Star People
John Scofield
ジョン・スコフィールド
1974年からビリー・コブハムとジョージ・デュークのバンドに参加。パット・メセニーに代わって76年からゲイリー・バートン・カルテットに加わって頭角を現します。マイルス・デイヴィスのグループには1982年から参加しますが、マイルズからの信頼は厚く、そのプレイの評価も高いように見受けられます。2016年、17年と連続してグラミー賞の最優秀ジャズ・インストゥメンタル・アルバムを受賞しています。
参加したアルバム
- Star People #2,3
- Docoy #1,3,5,6,7
- You’re Under Arrest #1,2,3,7,8,9
Michael Landau
マイケル・ランドー
スタジオ・ミュージシャンとしてあまりにも高名で、非常に多くのアーティストのレコーディングに参加していますが、マイルス・デイヴィスのアルバムAmandaにも1曲参加しています。
参加したアルバム
Amandla
Jean-Paul Bourelly
ジャン=ポール・ブレリー
シカゴ出身で両親はハイチの生まれです。80年代には、ムハル・リチャード・エイブラムス、オル・ダラ、ロイ・ヘインズ、エルヴィン・ジョーンズ、ファラオ・サンダース、マッコイ・タイナー、スティーヴ・コールマン、マーク・リボー、エリオット・シャープ、アーチー・シェップ、デヴィッド・トーンなどにセッション・ミュージシャンとして参加しています。
ジャズ系のブラック・ファンク・ギタリストとして、James Blood Ulmerあたりと比較されるようですが、個人的には一番好きなタイプのギタリストです。この人がジミ・ヘンドリックスへのトリビュートアルバムを出しているのですが、これがお勧めできる傑作で別の機会に紹介する予定です。一言でいえばエスニック・フレイバーのジミ・ヘンドリックスとでもいうのでしょうか。割とストレートなアレンジでのカバーが多いにも関わらず、そのフレイバーは国籍不明の異彩を放っています。誤解を恐れず強いて言えば、ラテンフレイバーのジミ・ヘンドリックスですね。
参加したアルバム
Amandla
FOLEY
Joseph Lee McCreary, Jr. 一般に”Foley”で通っています。マーカス・ミラーの紹介でマイルスのグループに参加します。本来ベーシストですが、ピッコロベースと呼ばれる特殊なベースでギターのようなプレイをします。ピッコロベースとはショート・スケールのベースにギターの3弦から6弦を張ったもののようで、普通のベースよりも調度1オクターブ高くチューニングする、ということらしいです。プレイの様子を見るとベースでギターの音を出しているように見えて戸惑います。1987年から1991年までマイルスとプレイを共にしています。
参加したアルバム
Live at Vienne
Randy Hall
ランディ・ホール
ギタリスト、シンガー、ソングライターで、マイルスのMan with the Hornのライターです。
地元シカゴでのDarryl JonesやJean-Paul Bourellyとの繋がりで、1980年代の中頃にマイルスの新しいアルバムのために呼び寄せられ、セッションを重ねてレコーディングを行いました。ところが、プロデューサーのトミー・リピューマがこのレコーディングの出来栄えに難色を示して没にされてしまいます。その代わりとして、マーカス・ミラーを中心にしたプロジェクトが立ち上げられ、これがアルバム”TUTU”として発表されることになります。TUTUはセールス的にも成功し音楽的評価も高く、マイルス・デイヴィス晩年の名盤とされています。
TUTUの陰で没にされたレコーディングは、35年間お蔵入りとなっていましたが、2019年にに秘蔵のアルバム”Rubberband”として発表されました。このアルバムでのRandy Hallの立場はギタリストというよりプロデューサーに近いようです。
参加したアルバム
Rubberband