1984年ビルボードとその時代

飽食と飢餓=繁栄と貧困、エチオピア飢饉、バンド・エイド、マイケル・ジャクソン、プリンス、マドンナ、ワム!、サイバーパンク、ニューロマンサー、アフリカン・ポップ、洋楽がお茶の間に入った時代、牛肉・オレンジ交渉、TRON、Macintosh(Apple Computer)、やわらかい個人主義、新中間大衆の時代。

《連載目次》

1983年から85年にかけてアフリカのエチオピアは大規模な飢饉に見舞われます。公式には干ばつが原因とされていますが、人権NGOの「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によれば、政府の軍政と人権侵害によって飢饉が深刻化してその打撃が大規模になった、と指摘されています。

この飢饉を受けて、イギリスではチャリティ・プロジェクトである「バンド・エイド」が結成され、大きな成功を納めます。このプロジェクトはミュージック・シーンに大きなインパクトを与え、翌年のUSAフォー・アフリカなどのプロジェクトが触発されることになります。

「強いアメリカの再現」を掲げるレーガンの姿勢によって、米ソ関係は「新冷戦」とも呼ばれる緊張状態を呈していましたが、米国内の経済の不振などを契機として、緊張の緩和へと次第に方向転換を図り始めていました。

バンド・エイド

バンド・エイドは、エチオピアの飢餓支援のためにイギリスとアイルランドのロック・ポップス界のスターたちが集まって結成されたチャリティー・プロジェクです。

プロジェクトの発起人は、ブームタウンラッツのボブ・ゲルドフとウルトラボックスのミッジ・ユーロで、彼らの共作による「Do They Know It’s Christmas?」をロンドンのサーム・ウェスト・スタジオでレコーディングしました。この曲は12月3日にリリースされ、全英チャートで4週間の間1位を獲った後、トータルでは375万枚を売り上げて大きな成功を収めました。

レコーディングに参加したのは、以下のアーティスト達です。

  • フィル・コリンズ(ジェネシス)
  • ボブ・ゲルドフ、サイモン・クロウ、ピート・ブリケット、ジョニー・フィンガーズ
    (ブームタウン・ラッツ)
  • スティーブ・ノーマン、マーティン・ケンプ、ゲイリー・ケンプ、ジョン・キーブル、トニー・ハドリー(スパンダー・バレエ)
  • ミッジ・ユーロ、クリス・クロス(ウルトラヴォックス)
  • ジョン・テイラー、サイモン・ル・ボン、ロジャー・テイラー、アンディ・テイラー、ニック・ローズ(デュラン・デュラン)
  • ポール・ヤング
  • グレン・グレゴリー、マーティン・ウェアー(ヘヴン17)
  • マリリン
  • カレン・ウッドワード、サラ・ダリン、シボーン・ファーイ(バナナラマ)
  • ジョディ・ワトリー(シャラマー)
  • ボノ、アダム・クレイトン(U2)
  • ポール・ウェラー(スタイル・カウンシル)
  • ジェームス・テイラー、ロバート・クール・ベル、デニス・トーマス(クール&ザ・ギャング)
  • ジョージ・マイケル(ワム!)
  • フランシス・ロッシ、リック・パーフィット(ステイタス・クォー)
  • ボーイ・ジョージ、ジョン・モス(カルチャー・クラブ)
  • スティング(ポリス)
  • ホリー・ジョンソン(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド)
  • スチュアート・アダムソン、ブルース・ワトソン、トニー・バトラー、マーク・ブレゼジッキー(ビッグ・カントリー)

また、レコーディングに直接参加はできなかったものの、以下の4名のアーティストは、メッセージを寄せる、という形でプロジェクトに参加しています。

  • ホリー ジョンソン(フランキー ゴーズ トゥ ハリウッド)
  • ポール マッカートニー
  • ビッグ カントリー
  • デヴィッド ボウイ

1984年のミュージックシーン

この時代、マイケル、マドンナ、プリンスの御三家がミュージック・シーンを牽引したことを否定する人はまずいないと思います。

マイケル・ジャクソンの『スリラー』は前年度のグラミー賞8部門を受賞して「キング・オブ・ポップ」の名を欲しいままにすることとなりました。

プリンスの『パープル・レイン』は8月4日から年末まで22週連続して1位を獲得しました。翌年まで含めると24週連続1位となります。

年末にアルバム「ライク・ア・バージン」をリリースしたマドンナの同名シングルも1位となり、翌年には御三家を形成することとなります。

他で目立った動きとしては、アイドルデュオ「ワム!」の「Wake Me Up Before You Go-Go」が全米、全英ともに1位となり、日本でもマクセルのCMに登場して人気を博しました。翌年には来日公演も果たしています。

1984年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧

アーティスト日付
Say Say SayPaul McCartney And Michael Jackson1/7
1/14
Owner Of A Lonely HeartYes1/21
1/28

Karma Chameleon
Culture Club2/4
2/11
2/18

Jump
Van Halen2/25
3/3
3/10
3/17
3/24
FootlooseKenny Loggins3/31
4/7
4/14

Against All Odds (Take A Look At Me Now)
Phil Collins4/21
4/28
5/5
HelloLionel Richie5/12
5/19
Let’s Hear It For The BoyDeniece Williams5/26
6/2
Time After TimeCyndi Lauper6/9
6/16
The ReflexDuran Duran6/23
6/30
When Doves CryPrince7/7
7/14
7/21
7/28
8/4
GhostbustersRay Parker Jr.8/11
8/18
8/25
What’s Love Got To Do With ItTina Turner9/1
9/8
9/15
Missing YouJohn Waite9/22
Let’s Go CrazyPrince And The Revolution9/29
10/6
I Just Called To Say I Love YouStevie Wonder10/13
10/20
10/27
Caribbean Queen (No More Love On The Run)Billy Ocean11/3
11/10
Wake Me Up Before You Go-GoWham!11/17
11/24
12/1
Out Of TouchDaryl Hall John Oates12/8
12/15
Like A VirginMadonna12/22
12/29
https://www.billboard.com/charts/hot-100/

1984年のビルボード200による1位のアルバム一覧

タイトルアーティスト日付
Thriller
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Michael Jackson1/7,14,21,28
2/4,11,18,25
3/3,10,17,24,31
4/7,14
Footloose
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Soundtrack4/21,28
5/5,12,19,26
6/2,9,16,23
Sports
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Huey Lewis & The News6/30
Born In The U.S.A.
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Bruce Springsteen7/7,14,21,28
Purple Rain (Soundtrack)
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Prince And The Revolution8/4,11,18,25
9/1,8,15,22,29
10/6,13,20,27
11/3,10,17,24
12/1,8,15,22,29

一目瞭然だが、マイケルとプリンスの時代のど真ん中でした。さらに言えばマドンナがそこに加わります。因みにこの3人は同い年です。「スリラー」は、1982年のリリースなのだが4月まで1位を独占しています。もっとすごいのが「Purple Rain」で8月から年末まで一人勝ちの状態でした。

1984年の国内アルバムランキング

国内で50位内にランクされていた洋楽アルバムは、マイケル・ジャクソン『スリラー』、カルチャー・クラブカラー・バイ・ナンバーズ』、シンディ・ローパー『N.Y.ダンステリア』、ヴァン・ヘイレン『1984』、デュラン・デュラン『セブン・アンド・ザ・ラグド・タイガー』、ポール・マッカートニー『パイプス・オブ・ピース』でした。

1984年にリリースされたその他のアルバム

  • ローリー・アンダーソン『ミスター・ハートブレイク』
  • Run-D.M.C.『Run-D.M.C.』
  • ティナ・ターナー『プライヴェート・ダンサー』
  • メタリカ『ライド・ザ・ライトニング』
  • ヴァン・ヘイレン『1984』
  • クイーン『ザ・ワークス』

1984年のミュージック・ライフ人気投票

  1. デュラン・デュラン
  2. ヴァン・ヘイレン
  3. カルチャー・クラブ
  4. ワム!
  5. ボン・ジョヴィ

1984年のぴあテン音楽

  1. 人気者で行こう サザンオールスターズ
  2. はじめまして 中島みゆき
  3. メイク・イット・ビッグ ワム!
  4. ノーサイド 松任谷由美
  5. ヴィジターズ 佐野元春

1984年の世界の出来事

  • 1月1日 – AT&T分割。
  • 1月1日 – ブルネイ独立。
  • 1月14日 – マクドナルドの創業者レイ・クロックがカリフォルニア州サンディエゴの病院で死去。
  • 1月21日 – 映画ターザンの主役をつとめたジョニー・ワイズミュラーが死去。
  • 1月24日 – 米Apple ComputerがMacintoshを発表。
  • 2月8日 – 冬季サラエボオリンピックが開幕。
  • 4月22日 – リビア大使館員によるデモ隊への乱射事件を受けてイギリスがリビアと国交を断絶。
  • 7月28日 – ロサンゼルスオリンピック開催。
  • 8月3日 – 日本の静止気象衛星「ひまわり3号」打上げ。
  • 8月5日 – ロサンゼルスオリンピックで、オリンピックで初めての女子マラソンを実施。
  • 8月21日 – フィリピンのマニラで、マルコス大統領に対する50万人規模の抗議デモ発生。
  • 8月24日 – トヨタ自動車が製造業で初の売上高5兆円企業となる。
  • 8月30日 – スペースシャトルディスカバリー、初の打ち上げに成功。
  • 10月31日 – インド首相、インディラ・ガンジーが暗殺される。
  • 11月6日 – アメリカ大統領選挙でレーガンが再選。
  • 11月11日 – シンボリルドルフが菊花賞を勝利し、史上4頭目の牡馬クラシック三冠達成。無敗(8戦8勝)での三冠達成は日本競馬史上初。
  • 12月3日 – インド・ボパールにあるユニオン・カーバイドの殺虫剤工場から有毒ガスが流出、2万人近くが死亡したボパール化学工場事故が発生。
  • 12月19日 – イギリスのサッチャー首相と中国の趙紫陽国務院総理が香港返還合意文書に調印。これにより1997年7月1日に香港が中国に返還されることになった。

wikipedia

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