1974年 ビルボード100とその時代

1974年のビルボード100で1位になった曲のリストを眺めながら、その年の世界と日本の出来事を振り返ります。

《連載目次》

1974年、アメリカではウォーターゲート事件の証拠提出を巡って議会と大統領が対立していましたが、最高裁が証拠提出を支持する判決を下し、さらに下院司法委員会が大統領の弾劾決議を可決する、という事態に至って、ニクソンは大統領を辞任します。

日本では夏の参院選での自民党の敗北を受けて、田中角栄の金権政治への批判が高まりました。文芸春秋が特集を組むなどジャーナリズムによる田中批判が展開し、結局11月をもって田中角栄は退陣を余儀なくされます。

石油危機以来、日本の高度成長は失速しますが、この年の秋に入って景気は一段と冷え込み、不況が深刻化します。日本経済は戦後初めてのマイナス成長へ急降下しました。この年に入り史上最悪の倒産件数・負債額を記録しています。

この年「キンシャサの奇跡」と呼ばれるモハメド・アリのボクシングの試合がザイールで行われ、その前座として催されたフェスティバルには、ジェームス・ブラウン、B.B. キング、クルセイダーズなどが出演して「黒いウッドストック」と呼ばれました。

1974年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧

年間チャートの1位はバーブラ・ストライサンドの「追憶」

アーティスト日付
タイム・イン・ア・ボトル
Time in a Bottle
ジム・クロウチ1/5
ジョーカー
The Joker
スティーヴ・ミラー・バンド1/12
ショー・アンド・テル
Show and Tell
アル・ウィルソン1/19
ユア・シックスティーン
You’re Sixteen
リンゴ・スター1/26
追憶
The Way We Were
バーブラ・ストライサンド2/2
愛のテーマ
Love’s Theme
ラブ・アンリミテッド・オーケストラ2/9
追憶
The Way We Were
バーブラ・ストライサンド2/16
2/23
そよ風のバラード
Seasons in the Sun
テリー・ジャックス3/2
3/9
3/16
悲しき恋占い
Dark Lady
シェール3/23
太陽を背にうけて
Sunshine on My Shoulders
ジョン・デンバー3/30
ウガ・チャカ
Hooked on a Feeling
ブルー・スウェード4/6
ベニーとジェッツ
Bennie and the Jets
エルトン・ジョン4/13
ソウル・トレインのテーマ
TSOP (The Sound of Philadelphia)
MFSBとザ・スリー・ディグリーズ4/20
4/27
ロコ・モーション
The Loco-Motion
グランド・ファンク・レイルロード5/4
5/11
ザ・ストリーク
The Streak
レイ・スティーヴンス5/18
5/25
6/1
バンド・オン・ザ・ラン
Band on the Run
ポール・マッカートニー&ウイングス6/8
悲しみのヒーロー
Billy Don’t Be a Hero
ボー・ドナルドソン&ザ・ヘイウッズ6/15
6/22
サンダウン
Sundown
ゴードン・ライトフット6/29
愛の航海
Rock the Boat
ヒューズ・コーポレーション7/6
ロック・ユア・ベイビー
Rock Your Baby
ジョージ・マックレー7/13
7/20
緑の風のアニー
Annie’s Song
ジョン・デンバー7/27
8/3
愛のためいき
Feel Like Makin’ Love
ロバータ・フラック8/10
ザ・ナイト・シカゴ・ダイド
The Night Chicago Died
ペーパー・レース8/17
二人のきずな
(You’re) Having My Baby
ポール・アンカ&オディア・コーツ8/24
8/31
9/7
アイ・ショット・ザ・シェリフ
I Shot the Sheriff
エリック・クラプトン9/14
あふれる愛を
Can’t Get Enough of Your Love, Babe
バリー・ホワイト9/21
ロック・ミー・ジェントリー
Rock Me Gently
アンディ・キム9/28
愛の告白
I Honestly Love You
オリビア・ニュートン=ジョン10/5
10/12
ナッシング・フロム・ナッシング
Nothing from Nothing
ビリー・プレストン10/19
愛のめぐり逢い
Then Came You
ディオンヌ・ワーウィック&スピナーズ10/26
悪夢
You Haven’t Done Nothin’
スティーヴィー・ワンダー11/2
恋のめまい
You Ain’t Seen Nothing Yet
バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ11/9
真夜中を突っ走れ
Whatever Gets You Thru The Night
ジョン・レノン11/16
アイ・キャン・ヘルプ
I Can Help
ビリー・スワン11/23
11/30
吼えろ! ドラゴン
Kung Fu Fighting
カール・ダグラス12/7
12/14
キャッツ・イン・ザ・クレイドル
Cat’s in the Cradle
ハリー・チェイピン12/21
アンジー・ベイビー
Angie Baby
ヘレン・レディ12/28

1974年の出来事

  • 2月13日 – ソビエト連邦がソルジェニーツィン追放。
  • 5月18日 – インドが初の地下核実験を実施。
  • 5月28日 – カーペンターズが3度目の来日。3万人募集の武道館公演に38万通以上の応募ハガキが来る。
  • 7月10日 – 沖縄県の伊江島で在日米軍による伊江島事件が起こる。
  • 7月24日 – ウォーターゲート事件: アメリカ最高裁がニクソン大統領と首席補佐官が事件対策を話しあう様子がおさめられた録音テープの引渡しを大統領側に命じる判決を出す。
  • 8月8日 – ウォーターゲート事件でニクソン米大統領辞任。フォード副大統領が大統領に昇格。
  • 8月15日 – ソウルで朴大統領狙撃事件(文世光事件)。
  • 8月19日 – 国連人口会議
  • 9月13日 – 日本赤軍がオランダ・ハーグにあるフランス大使館を占拠(ハーグ事件)。
  • 10月30日 – ザイールの首都キンシャサでおこなわれたプロボクシングWBA・WBC統一ヘビー級タイトルマッチで、挑戦者で元チャンピオンのモハメド・アリがチャンピオンのジョージ・フォアマンにKO勝ちを収め、兵役拒否での剥奪から7年ぶりにチャンピオンを奪回(キンシャサの奇跡)。
  • 11月18日 – フォード米大統領が、現職の大統領として初めて来日。
  • 12月 アメリカで、国民の金所有の自由化

1974年のロック系アルバムリリース

  • ニール・ヤング 『渚にて』
  • ローリング・ストーンズ 『イッツ・オンリー・ロックンロール』
  • ジョン・レノン 『心の壁、愛の橋』
  • ジョージ・ハリスン 『ダークホース』
  • リンゴ・スター 『グッドナイト・ウィーン』
  • ジョニ・ミッチェル 『コート・アンド・スパーク』『マイルズ・オブ・アイルズ』
  • ジェファーソン・スターシップ 『ドラゴンフライ』
  • ヴァン・モリソン 『魂の道のり』
  • グランド・ファンク・レイルロード 『シャイニン・オン』
  • モット・ザ・フープル 『ロックンロール黄金時代』
  • ボブ・ディラン 『プラネット・ウェイヴズ』『偉大なる復活』
  • ジャクソン・ブラウン 『レイト・フォー・ザ・スカイ』
  • ハリー・ニルソン 『プシー・キャット』
  • ディープ・パープル 『紫の炎』
  • ロキシー・ミュージック 『カントリー・ライフ』
  • バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ 『ノット・フラジャイル』
  • エレクトリック・ライト・オーケストラ 『エルドラド』
  • ロン・ウッド 『俺と仲間』
  • プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(PFM) 『甦る世界』(イタリア)
  • クラフトワーク 『アウトバーン』(ドイツ)
  • カン 『スーン・オーヴァー・ババルーマ』(ドイツ)
  • サンタナ 『ロータスの伝説』
  • スティーヴィー・ワンダー 『ファースト・フィナーレ』
  • ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ 『ナッティ・ドレッド』(ジャマイカ)
  • ポール・サイモン 『ライヴ・ライミン』
  • ドゥービー・ブラザーズ 『ドゥービー天国』
  • ギル・エヴァンス 『プレイズ・ジミ・ヘンドリックス』
  • リンダ・ロンシュタット 『悪いあなた』
  • キャロル・キング 『喜びにつつまれて』
  • ハットフィールド・アンド・ザ・ノース 『ハットフィールド・アンド・ザ・ノース』
  • ライ・クーダー 『パラダイス・アンド・ランチ』
  • エリス・レジーナ&アントニオ・カルロス・ジョビン 『エリス&トム』(ブラジル)
  • アンディ・キム 『アンディ・キム』
  • デヴィッド・ボウイ 『ダイアモンドの犬』
  • クイーン 『クイーンII』『シアー・ハート・アタック』
  • エリック・クラプトン 『461 オーシャン・ブールヴァード』
  • キング・クリムゾン 『レッド』
  • ブライアン・イーノ 『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』

1974年日本での年間トップ10アルバム

1位 井上陽水:『氷の世界』
2位 カーペンターズ:『ゴールデン・プライズ第2集』
3位 井上陽水:『陽水ライヴ もどり道』
4位 カーペンターズ:『ナウ・アンド・ゼン』
5位 かぐや姫:『三階建の詩』
6位 チェリッシュ:『ベスト・コレクション’74』
7位 井上陽水:『断絶』
8位 井上陽水:『陽水II センチメンタル』
9位 グラシェラ・スサーナ:『アドロ・サバの女王』
10位 小椋佳:『彷徨』

1974年の武道館公演

  • 1月18日 – ムーディー・ブルース
  • 2月1日・2日 – エルトン・ジョン
  • 2月10日 – ジェームス・ブラウン
  • 2月19日・20日 – ロッド・スチュワート&フェイセズ
  • 8月29日・10月2日 – フィンガー5
  • 10月31日・11月1日・2日 – エリック・クラプトン
  • 11月15日・16日・17日 – 第5回世界歌謡祭
  • 11月21日・22日 – トム・ジョーンズ
  • 12月10日 – サンタナ

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