1976年 ビルボードとその時代

1976年のビルボード100で1位になった曲のリストを眺めながら、その年の世界と日本の出来事を振り返ります。
ロッキード事件、田中角栄逮捕、四人組、猪木対モハメド・アリ、"Gratitude"/ Earth, Wind & Fire, "Breezin'"/ George Benson, "Songs In The Key Of Life"/ Stevie Wonder

《連載目次》

この年の2月、アメリカ上院の公聴会でロッキード事件が発覚します。ロッキード事件は米ロッキード社の日本に対する航空機売り込みにからむ疑獄事件で、政界・財界・官界を巻き込んで戦後最大といわれる汚職事件となりました。7月には元首相の田中角栄が逮捕されます。裁判による事件の解明は翌年以降ですが、当時の腐敗した金権体質政治を国民の前に暴露することになりました。

中国では1月に周恩来、9月に毛沢東が亡くなり、指導者をなくした混乱が生じます。10月には文化大革命の行き過ぎた指導で四人組が逮捕されます。ベトナムは南北が統一されてベトナム社会主義共和国となります。

アントニオ猪木対モハメド・アリの異種格闘技戦が大きな話題を集めましたが、実際の試合は退屈で批判を浴びました。ピンクレディーがデビューしたのもこの年です。

1976年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧

チャートの1位はウィングスの「心のラヴ・ソング」。

アーティスト日付
サタデー・ナイト
Saturday Night
ベイ・シティ・ローラーズ1/3
コンボイ
Convoy
C. W. マッコール1/10
歌の贈りもの
I Write the Songs
バリー・マニロウ1/17
マホガニーのテーマ
Theme from Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)
ダイアナ・ロス1/24
愛のローラーコースター
Love Rollercoaster
オハイオ・プレイヤーズ1/31
恋人と別れる50の方法
50 Ways to Leave Your Lover
ポール・サイモン2/7
2/14
2/21
反逆のテーマ
Theme from S.W.A.T.
リズム・ヘリテイジ2/28
ラブ・マシーン
Love Machine
ミラクルズ3/6
1963年12月 (あのすばらしき夜)
December, 1963 (Oh, What a Night)
フォー・シーズンズ3/13
3/20
3/27
ディスコ・レイディー
Disco Lady
ジョニー・テイラー4/3
4/10
4/17
4/24
愛はそよかぜ
Let Your Love Flow
ベラミー・ブラザーズ5/1
ウェルカム・バック
Welcome Back
ジョン・セバスチャン5/8
ブギー・フィーバー
Boogie Fever
シルヴァーズ5/15
心のラヴ・ソング
Silly Love Songs
ウイングス5/22
ラブ・ハングオーバー
Love Hangover
ダイアナ・ロス5/29
6/5
心のラヴ・ソング
Silly Love Songs
ウイングス6/12
6/19
6/26
7/3
アフタヌーン・デライト
Afternoon Delight
スターランド・ヴォーカル・バンド7/10
7/17
涙の口づけ
Kiss and Say Goodbye
マンハッタンズ7/24
7/31
恋のデュエット
Don’t Go Breaking My Heart
エルトン・ジョン&キキ・ディー8/7
8/14
8/21
8/28
ユー・シュッド・ビー・ダンシング
You Should Be Dancing
ビージーズ9/4
シェイク・ユア・ブーティ
(Shake, Shake, Shake) Shake Your Booty
KC&ザ・サンシャイン・バンド9/11
プレイ・ザット・ファンキー・ミュージック
Play That Funky Music
ワイルド・チェリー9/18
9/25
10/2
運命’76
A Fifth of Beethoven
ウォルター・マーフィーとビッグ・アップル・バンド10/9
ディスコ・ダック
Disco Duck
リック・ディーズ10/16
愛ある別れ
If You Leave Me Now
シカゴ10/23
10/30
ロックン・ミー
Rock’n Me
スティーブ・ミラー・バンド11/6
今夜きめよう
Tonight’s the Night (Gonna Be Alright)
ロッド・スチュワート11/13
11/20
11/27
12/4
12/11
12/18
12/25

1976年のビルボード200による1位のアルバム一覧

タイトルアーティスト日付
Chicago IX: Chicago’s Greatest HitsChicago1/3,10
Gratitude
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Earth, Wind & Fire1/17,24,31
Desire
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Bob dylan2/7,14,21,28
3/6
Their Greatest Hits 1971-1975Eagles3/13,20,27
4/3,17
Frampton Comes Alive
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Peter Frampton4/10
7/24
8/14,21,28
9/11,18,25
10/2,9
At The Speed Of Sound
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Wings4/24
5/29
6/19,26
7/17
Presence
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Led Zeppelin5/1,8
Black And Blue
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The Rolling Stones5/15,22
6/5,12
7/10
Breezin’
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George Benson7/31
8/7
Fleetwood Mac
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Fleetwood Mac9/4
Songs In The Key Of Life
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Stevie Wonder10/16,23,30
11/6,13,20,27
12/4,11,18,25

1976年のミュージックシーン

クロスオーバーからフュージョンやディスコへ大きな流れが移って行きます。ボズ・スキャッグス、ジョージ・ベンソンやスタッフがその流れを代表しているでしょうか。全体として軽くて聴きやすくダンサブルなサウンドへの流れは止まらなくなっており、代わりにハード/ヘヴィなロックやソウルは勢いをなくしてしまいます。その反動ともいえる流れでパンクロックが台頭してきますが、この年にはまだ大きなウェーブにはなっていません。

スティーヴィー・ワンダー 『キー・オブ・ライフ』、イーグルス 『ホテル・カリフォルニア』など傑作アルバムが多くリリースされ、ロック系は一つのピークを迎えた、ともとれますが、ここから衰退へ向かうという解釈の方が的を得ているかもしれません。

この年にWild CherryのPlay The Funky Musicが大ヒットとなりますが、これ以降のダンス・チューンは次第にキック4つ打ちのシンプルなビートにとって代わられていき、本格的なディスコブームへと向かっていきます。KC&ザ・サンシャイン・バンドのFunkなグルーブもこの年を最後にして以降ディスコ系へ変わってしまいます。

日本のオリコン・アルバムチャートの中の洋楽

  • 20位 ジャニス・イアン:『愛の余韻』
  • 22位 クイーン:『オペラ座の夜』
  • 31位 サンタナ:『アミーゴ』
  • 34位 ベイ・シティ・ローラーズ:『ニュー・ベスト』
  • 39位 カーペンターズ:『見つめあう恋』
  • 40位 ポール・マッカートニー&ウイングス:『スピード・オブ・サウンド』
  • 44位 ジェフ・ベック:『ワイアード』
  • 45位 ボブ・ディラン:『欲望』
  • 46位 レッド・ツェッペリン:『プレゼンス』

1976年のロック系アルバムリリース

  • ローリング・ストーンズ 『ブラック・アンド・ブルー』
  • オハイオ・プレイヤーズ 『コントラディクション』
  • ジェームス・ブラウン 『ゲット・アップ・オフア・ザット・シング』
  • クール&ギャング 『ラブ&アンダースタンディング』
  • ポール・マッカートニー&ウイングス 『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』『スピード・オブ・サウンド』
  • ルー・リード 『コニー・アイランド・ベイビー』
  • トッド・ラングレン 『誓いの明日』
  • シン・リジィ 『脱獄』
  • ピーター・フランプトン 『フランプトン・カムズ・アライヴ!』
  • ロキシー・ミュージック 『ビバ!ロキシー・ミュージック』
  • ジョージ・ハリソン 『33 1/3』
  • ボズ・スキャッグス 『シルク・ディグリーズ』
  • ジャクソン・ブラウン 『プリテンダー』
  • リンダ・ロンシュタット 『風にさらわれた恋』
  • ボブ・ディラン 『激しい雨』
  • トム・ウェイツ 『スモール・チェンジ』
  • エルトン・ジョン 『ヒア・アンド・ゼア〜ライブ・イン・ロンドン&N.Y.』
  • ライ・クーダー 『チキン・スキン・ミュージック』
  • ステイタス・クォー 『ブルー・フォー・ユー』
  • 10cc 『びっくり電話』
  • スティーヴィー・ワンダー 『キー・オブ・ライフ』
  • イーグルス 『ホテル・カリフォルニア』(76-77)
  • エレクトリック・ライト・オーケストラ 『オーロラの救世主』
  • ボストン 『幻想飛行』
  • カーリー・サイモン 『見知らぬ二人』
  • ザ・ランナウェイズ 『悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン』
  • アル・スチュワート 『イヤー・オブ・ザ・キャット』(76-77年)
  • マンフレッド・マンズ・アース・バンド 『静かなる叫び』
  • ジャコ・パストリアス 『ジャコ・パストリアスの肖像』
  • スタンリー・クラーク 『スクール・デイズ』
  • セルジュ・ゲンスブール 『くたばれキャベツ野郎』
  • クイーン 『オペラ座の夜』『華麗なるレース』
  • ジョージ・ベンソン 『ブリージン』
  • 『New Orleans Jazz And Heritage Festival 1976』
  • スタッフ 『Stuff』

1976年の出来事

  • 1月8日 – 中華人民共和国の周恩来国務院総理が死去。
  • 1月18日 – 沖縄国際海洋博覧会閉幕。
  • 2月4日 – インスブルック冬季オリンピック開幕。
  • 2月6日 – アメリカで、ロッキード事件が発覚する。
  • 3月1日 – 韓国で金大中ら12人が「民主救国宣言」を発表。朴正煕政権を批判する。
  • 3月24日 – アルゼンチンで無血クーデター。イサベル・ペロン大統領が失脚。
  • 4月1日 – アップルコンピュータ(現:Apple)設立。
  • 4月5日 – 四五天安門事件
  • 4月25日 – ベトナム統一選挙実施。
  • 5月9日 – 植村直己が1万2000キロの北極圏犬ゾリ横断を達成。
  • 7月2日 – 南北ベトナムが統一。
  • 7月4日 – アメリカ独立宣言200周年。
  • 7月17日 – モントリオールオリンピック開催。8月1日まで。
  • 7月28日 – 中国で唐山地震。20万人以上の犠牲。
  • 8月26日 – エボラウイルス属のザイールエボラウイルスによるエボラ出血熱の世界初の患者がザイールで発生する。
  • 9月6日 – ベレンコ中尉亡命事件。ソ連のMiG-25が函館に着陸し亡命を求めた。
  • 9月9日 – 中華人民共和国の毛沢東共産党主席が死去。
  • 10月12日 – 中華人民共和国の文化大革命を指導した江青ら四人組が逮捕、華国鋒が同国の首相に就任。
  • 11月2日 – アメリカ大統領選挙で、カーター(民主党)が現職のフォード(共和党)を破り初当選。

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