1978年の世界と音楽シーン。キャンプデービッド合意、日中国交回復。東急ハンズ、ディスコブーム、ヴァン・ヘイレン、YMOデビュー。
1978年9月17日、アメリカのカーター大統領が仲介する形で、中東和平に関しエジプトのサダト大統領,イスラエルのベギン首相がアメリカ,メリーランド州の大統領山荘キャンプデービッドで合意を成立させました。合意は「中東和平のための枠組み」と「エジプト・イスラエル平和条約締結のための枠組み」の2つから成りますが、前者はパレスチナ占領地の住民に自治を認めるにとどまり、占領地からのイスラエル軍の撤退とパレスチナ人の民族自決権が棚上げされたため、ほとんどのアラブ諸国が合意に反対しました。
1972年に日本と中国は国交を回復しましたが、それを踏まえて1978年8月12日に「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」が締結されました。10月には鄧小平が来日します。
日本では東急ハンズ一号店が9月に開店。サザンオールスターズがデビュー。音楽番組「ザ・ベストテン」がスタートしたのもこの年でした。爆発的な人気を得たピンクレディの絶頂期であり、一方でピンクレディと人気の双璧をなしたキャンディーズが解散しました。
1978年のミュージックシーン
1978年、世界のミュージック・シーンはディスコ・ブームに完全に席巻されました。日本では加えてピンクレディ一です。洋楽でサウンドとリズムアレンジが怖いほどに画一化されてしまったということは、音楽ファンにとっては不毛で不幸な時代であったとも言えます。ローリング・ストーンズまでもがディスコ調のシングル盤をリリースしてきたのには驚かされました。
ブームは一時的なもので長くは続かないのですが、それでも音楽シーンの「停滞」は著しいものだったと言えます。今聴き直すと、Chickの”Le Freak”やEarth, Wind & Fireの”Fantasy”など現在にも通用すると思わせるようなダンス・ファンクナンバーもあるにはあったのですが、ほとんどの曲は単調なリズムに軽薄なサウンドをのせただけのつまらないものだった・・・というのは個人的な感想です。米国のチャートでは”Fantasy”は今一つ奮いませんでしたが日本では大ヒットして、6月19日付のオリコンチャートで1位を獲得しました。
この年のデビューでは、ヴァン・ヘイレンとYMOが目立ちます。ヴァン・ヘイレンは1月にデビューしてアルバム『炎の導火線』がたちまちプラチナディスクを獲得。6月には早くも来日公演を果たしています(東京は厚生年金ホールと中野サンプラザ)。YMOは11月にデビューアルバムをリリースしますが、世界的なブームを巻き起こすのはこの翌年です。
1978年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧
チャートの1位はアンディ・ギブの「シャドー・ダンシング」。ビージーズとアンディ・ギブの一人勝ちです。
曲 | アーティスト | 日付 |
愛はきらめきの中に How Deep Is Your Love | ビージーズ | 1/7 |
ベイビー・カム・バック Baby Come Back | プレイヤー | 1/14 1/21 1/28 |
ステイン・アライヴ Stayin’ Alive | ビージーズ | 2/4 2/11 2/18 2/25 |
愛の面影 (Love Is) Thicker Than Water | アンディ・ギブ | 3/4 3/11 |
恋のナイト・フィーバー Night Fever | ビージーズ | 3/18 3/25 4/1 4/8 4/15 4/22 4/29 5/6 |
アイ・キャント・ハヴ・ユー If I Can’t Have You | イヴォンヌ・エリマン | 5/13 |
しあわせの予感 With a Little Luck | ポール・マッカートニー&ウイングス | 5/20 5/27 |
涙のデュエット Too Much, Too Little, Too Late | ジョニー・マティス and デニース・ウィリアムス | 6/3 |
愛のデュエット You’re the One That I Want | ジョン・トラボルタ and オリビア・ニュートン=ジョン | 6/10 |
シャドー・ダンシング Shadow Dancing | アンディ・ギブ | 6/17 6/24 7/1 7/8 7/15 7/22 7/29 |
ミス・ユー Miss You | ローリング・ストーンズ | 8/5 |
永遠の人に捧げる歌 Three Times a Lady | コモドアーズ | 8/12 8/19 |
グリース Grease | フランキー・ヴァリ | 8/26 9/2 |
今夜はブギ・ウギ・ウギ Boogie Oogie Oogie | テイスト・オブ・ハニー | 9/9 9/16 9/23 |
キッス・ユー・オール・オーヴァー Kiss You All Over | エグザイル | 9/30 10/7 10/14 10/21 |
ホット・チャイルド Hot Child in the City | ニック・ギルダー | 10/28 |
辛い別れ You Needed Me | アン・マレー | 11/4 |
マッカーサー・パーク MacArthur Park | ドナ・サマー | 11/11 11/18 11/25 |
愛のたそがれ You Don’t Bring Me Flowers | バーブラ・ストライサンド and ニール・ダイアモンド | 12/2 |
おしゃれフリーク Le Freak | シック | 12/9 |
愛のたそがれ You Don’t Bring Me Flowers | バーブラ・ストライサンド and ニール・ダイアモンド | 12/16 |
おしゃれフリーク Le Freak | シック | 12/23 12/30 |
1978年のビルボード200による1位のアルバム一覧
アルバム | アーティスト | 日付 |
Rumours | Fleetwood Mac | 1/7 1/14 |
Saturday Night Fever | Soundtrack | 1/21 1/28 2/4 2/11 2/18 2/25 3/4 3/11 3/18 3/25 4/1 4/8 4/15 4/22 4/29 5/6 5/13 5/20 5/27 6/3 6/10 6/17 6/24 7/1 |
City To City | Gerry Rafferty | 7/8 |
Some Girls | The Rolling Stones | 7/15 7/22 |
Grease | Soundtrack | 7/29 8/5 8/12 8/19 8/26 9/2 9/9 |
Don’t Look Back | Boston | 9/16 |
Grease | Soundtrack | 9/23 9/30 |
Don’t Look Back | Boston | 10/7 |
Grease | Soundtrack | 10/14 10/21 10/28 |
Living In The U.S.A. | Linda Ronstadt | 11/4 |
Live And More | Donna Summe | 11/11 |
52nd Street | Billy Joel | 11/18 11/25 12/2 12/9 12/16 12/23 12/30 |
その他の洋楽アルバムリリースとミュージックシーン
ポリス、トーキング・ヘッズやディーボなど「ニューウェーブ」がデビューし始めています。これらは「ポスト・パンク」というくくりで語られることもありましたが、レゲエ、スカ、ファンク、ダブなどを混交したスタイルは次の世代を予感させるものでした。「ニューウェーブ」が出始めるということは、70年代前期の「ニューロック」が音楽的な成熟とともに既に「ニュー」ではなくなりほぼ終焉したということでもあります。
- ニール・ヤング 『カムズ・ア・タイム』
- パティ・スミス・グループ 『イースター』
- ブルース・スプリングスティーン 『闇に吠える街』
- ダイアー・ストレイツ 『悲しきサルタン』
- ニコレット・ラーソン 『愛しのニコレット』
- ファンカデリック 『ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ』
- パーラメント 『モーター・ブーティー・アフェア』
- ピーター・トッシュ 『ブッシュ・ドクター』
- ジェネシス 『そして3人が残った』
- スティーヴ・ヒレッジ 『グリーン』
- クラトゥ 『サー・アーミー・スーツ』
- ニーナ・シモン 『ボルチモア』
- トーキング・ヘッズ 『サイコ・キラー’77』
- ゲイリー・ムーア 『バック・オン・ザ・ストリーツ』
- チープ・トリック 『チープ・トリックat武道館』
- XTC 『ホワイト・ミュージック』
- ウルトラヴォックス 『システム・オブ・ロマンス』
- ディーヴォ 『頽廃的美学論』
- ポリス 『アウトランドス・ダムール』
- ブルース・ブラザーズ 『ブルースは絆』
- エアロスミス 『ライヴ・ブートレッグ』
- ジェーン・バーキン 『想い出のロックン・ローラー』
- ドクター・ジョン 『シティ・ライツ』
- フォリナー 『ダブル・ヴィジョン』
- シン・リジィ 『ライヴ・アンド・デンジャラス』
- ジャム『オール・モッド・コンズ』
- トム・スコット 『インティメット・ストレンジャー』
- ボブ・ディラン 『ストリート・リーガル』『武道館』
- ビリー・ジョエル 『ニューヨーク52番街』
- ヴァン・ヘイレン 『炎の導火線』
- クイーン 『ジャズ』
1978年の出来事
- 4月6日 – 東京の東池袋に60階建の超高層ビル「サンシャイン60」がオープン。
4月20日 – 大韓航空機銃撃事件が発生。
5月21日 – 新東京国際空港(現成田国際空港)開港後の第1便が着陸。
7月25日 – イギリスで世界初の体外受精児が誕生。
8月12日 – 日中平和友好条約調印。
9月17日 – ジミー・カーター米大統領の仲介によって、エジプトとイスラエルがキャンプ・デービッド合意。
10月16日 – 青木功が世界マッチプレー選手権で初優勝。
11月18日 – ガイアナで、宗教団体「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズとその信者が集団自殺。914人が死亡。
12月7日 – 第1次大平内閣発足。
武道館公演
- 8月3日・4日 – ロゼッタ・ストーン
- 8月28日 – Char
- 8月29日・30日・9月1日 – アリス
- 8月31日 – アグネス・チャン
- 9月7日・8日・18日・20日 – ベイ・シティ・ローラーズ
- 10月17日・18日 – オリビア・ニュートン=ジョン
- 10月25日・26日・27日 – ピーター・フランプトン
- 10月29日 – レイモン・ルフェーブル・グランド・オーケストラ
- 11月3日 – 西城秀樹
- 11月10日・11日・12日 – 世界歌謡祭
- 11月20日 – ジャニス・イアン
- 11月30日・12月1日・2日 – ジェフ・ベック
- 12月11日 – デヴィッド・ボウイ
- 12月12日 – キース・ジャレット
- 12月23日 – アリス
- 12月24日 – 沢田研二
- 12月25日・27日 – ピンク・レディー