1979年 ビルボードとその時代

1979年の世界と音楽シーン。第2次オイルショック、スリーマイル島原発事故。ディスコ、ウォークマン、ディスコ・デモリッション・ナイト。

《連載目次》

1979年1月1日、米中はカーター大統領と鄧小平の下で国交を樹立します。これによって中華民国(台湾)との国交は公式には断絶されました。それでも台湾との軍事的、経済的関係は非公式な関係のままで維持・強化されます。

背景にあるのは、アメリカとソ連との冷戦下の対立です。アメリカは中華人民共和国との国交を樹立することでソ連との対立が有利な展開となることを狙います。対立は維持しながらも、緊張が不必要に拡大することを抑止するという微妙な選択だと思われます。

イラン革命が発生してイランでの石油生産がストップしたため、石油の供給不安と価格の高騰をもたらしました。この事態を1973年の第一次オイルショックに次ぐ第2次オイルショックと呼びます。

この年の3月スリーマイル島で原発事故が発生し、非常事態が宣言され住民が避難する事態となりました。これをきっかけに原発の安全性に関する議論が始まりました。破壊されたのは2号炉でしたが、残った1号炉は稼働が続けられ、その後2019年9月まで営業運転が行われました。

音楽ファンにとってこの年は「ディスコ」と「ウォークマン」でした。音楽を持ち歩くというスタイルがちょっとしたブームになったものでした。当時は、持ち歩くためにレコードからカセットテープにダビングすることが必要で、今から考えるとずいぶん面倒な話なのですが、当時の音楽ファンは小まめに勤しんでいました。

ディスコ・デモリッション・ナイト

ディスコ・デモリッション・ナイトは、メジャーのダブルヘッダー試合の間の催しとして、観客が持ち寄ったディスコ音楽のレコードを破壊するというイベントでしたが、暴動へと炎上してダブルヘッダーの第2試合が中止になりました。
このイベントは、大のディスコ音楽嫌いだったシカゴのラジオ局DJ、スティーブ・ダールが企画してシカゴ・ホワイトソックスの球団幹部に持ち掛けたものでした。
この時のディスコ音楽はアメリカを中心に世界を巻き込む形で大きなブームを巻き起こしていましたが、人気の大きさに比例して強い反感も広がっていました。

この事件は単にディスコ音楽への反感だけでなく、ディスコ音楽を支える黒人音楽やゲイ文化への強い差別が背景にあったという指摘もありました。実際、ディスコ音楽は、黒人やゲイなどのマイノリティが多く参加していたジャンルであったため、それらに強い反感を感じる保守層にとってのシンボリックな標的となった可能性はあり得ます。

同時に、ロックやファンクの音楽ファンの中には、ファンク系のグルーブが単純なディスコ・ビートに安易に塗りつぶされてしまうことに怒りを覚える者が多数いたことも事実です。彼らにしてみれば、70年代の初頭以来せっかくの盛り上がりを見せていたロックやファンクが死んでしまうようにも感じられたのでしょう。

一過性のブームは間もなく沈静化しますが、ダンスミュージックはハウスやクラブとして形を変えながら、アンダーグラウンドでしぶとく存続していくことになります。

1979年のビルボードHOT100による1位のシングル一覧

アーティスト日付
Too Much HeavenBee Gees1/6
1/13
Le FreakChic1/20
1/27
2/3
Da Ya Think I’m Sexy?Rod Stewart2/10
2/17
2/24
3/3
I Will SurviveGloria Gaynor3/10
3/17
TragedyBee Gees3/24
3/31
I Will SurviveGloria Gaynor4/7
What A Fool BelievesThe Doobie Brothers4/14
Knock On WoodAmii Stewart4/21
Heart Of GlassBlondie4/28
ReunitedPeaches & Herb5/5
5/12
5/19
5/26
Hot StuffDonna Summer6/2
Love You Inside OutBee Gees6/9
Hot StuffDonna Summer6/16
6/23
Ring My BellAnita Ward6/30
7/7
Bad GirlsDonna Summer7/14
7/21
7/28
8/4
8/11
Good TimesChic8/18
My SharonaThe Knack8/25
9/1
9/8
9/15
9/22
9/29
Sad EyesRobert John10/6
Don’t Stop ‘til You Get EnoughMichael Jackson10/13
RiseHerb Alpert10/20
10/27
Pop MuzikM11/3
Heartache TonightEagles11/10
StillCommodores11/17
No More Tears (Enough Is Enough)Barbra Streisand/Donna Summer11/24
12/1
BabeStyx12/8
12/15
Escape (The Pina Colada Song)Rupert Holmes12/22
12/29

1979年のビルボード200で1位になったアルバム

アルバムアーティスト日付
Barbra Streisand’s Greatest Hits, Volume 2Barbra Streisand1/6
1/13
1/20
52nd StreetBilly Joel1/27
Briefcase Full of Blues (Soundtrack)Blues Brothers2/3
Blondes Have More FunRod Stewart2/10
2/17
2/24
Spirits Having FlownBee Gees3/3
3/10
3/17
3/24
3/31
Minute By MinuteThe Doobie Brothers4/7
4/14
Spirits Having FlownBee Gees4/21
Minute By MinuteThe Doobie Brothers4/28
5/5
5/12
Breakfast In AmericaSupertramp5/19
5/26
6/2
6/9
Bad GirlsDonna Summer6/16
Breakfast In AmericaSupertramp6/23
6/30
Bad GirlsDonna Summer7/7
7/14
7/21
7/28
8/4
Get The KnackThe Knack8/11
8/18
8/25
9/1
9/8
In Through The Out DoorLed Zeppelin9/15
9/22
9/29
10/6
10/13
10/20
10/27
The Long RunEagles11/3
11/10
11/17
11/24
12/1
12/8
12/15
12/22
12/29

1979年のアルバム

  • ニール・ヤング 『ラスト・ネヴァー・スリープス』『ライブ・ラスト』
  • マイケル・ジャクソン 『オフ・ザ・ウォール』
  • イーグルス 『ロング・ラン』
  • ヴァン・モリソン 『イントゥ・ザ・ミュージック』
  • トーキング・ヘッズ 『フィア・オブ・ミュージック』
  • ジョイ・ディヴィジョン 『アンノウン・プレジャーズ』
  • ザ・クラッシュ 『ロンドン・コーリング』
  • シンプル・マインズ 『リアル・トゥ・リアル・カコフォニー』
  • ポリス 『白いレガッタ』
  • トム・スコット 『ストリート・ビート』
  • セルジュ・ゲンスブール 『フライ・トゥ・ジャマイカ』
  • スーパートランプ 『ブレックファスト・イン・アメリカ』
  • ジューダス・プリースト 『イン・ジ・イースト』
  • AC/DC 『地獄のハイウェイ』
  • フリートウッド・マック 『牙 (タスク)』
  • クイーン 『ライヴ・キラーズ』
  • TOTO 『ハイドラ』
  • トム・スコット 『ストリート・ビート』
  • イアン・デューリー 『ドゥ・イット・ユアセルフ』
  • ファンカデリック 『アンクル・ジャム・ウォンツ・ユー』
  • シック 『リスク』
  • マッドネス 『ワン・ステップ・ビヨンド』
  • スペシャルズ 『スペシャルズ』
  • エルヴィス・コステロ 『アームド・フォーセズ』
  • フランク・ザッパ 『スリープ・ダート』
  • ジョー・ジャクソン 『ルック・シャープ』
  • The B-52’s 『警告! THE B-52’s来襲』
  • シスター・スレッジ 『ウイ・アー・ファミリー』

1979年のオリコンアルバムチャートの中の洋楽

  • 5位 ABBA:『ヴーレー・ヴー』
  • 9位 ABBA:『アライバル』
  • 11位 ロッド・スチュワート:『スーパースターはブロンドがお好き』
  • 14位 ビリー・ジョエル:『ニューヨーク52番街』
  • 16位 サウンドトラック:『グリース』
  • 20位 ABBA:『グレイテスト・ヒッツ24』
  • 25位 ビージーズ:『失われた愛の世界』
  • 29位 スーパートランプ:『ブレックファスト・イン・アメリカ』
  • 38位 ドナ・サマー:『華麗なる誘惑』
  • 40位 アース・ウィンド・アンド・ファイアー:『ベスト・オブ・EW & F VOL.1』
  • 41位 イーグルス:『ロング・ラン』
  • 42位 アース・ウィンド・アンド・ファイアー:『黙示録』
  • 46位 クイーン:『ジャズ』
  • 47位 レッド・ツェッペリン:『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』

1979年の出来事

  • 1月1日 – アメリカ合衆国と中華民国(台湾)が国交断絶。アメリカ合衆国と中華人民共和国が国交樹立。
  • 1月28日 – 鄧小平が、米中国交樹立をうけ、同28日から2月5日にかけて訪米(英語版)。首都ワシントンで大統領ジミー・カーターとの会談後、ヒューストン、シアトル、アトランタなどを訪問。最先端の航空・宇宙産業、自動車産業、通信技術産業を視察した。
  • 2月1日 – イラン革命。
  • 2月17日 – カンボジアをめぐる対立から中越戦争が勃発。
  • 3月16日 – 中国軍がベトナムの領土から撤退し、中越戦争が終了。
  • 3月26日 – エジプトとイスラエルがワシントンでエジプト・イスラエル平和条約に調印。
  • 3月28日 – アメリカのスリーマイル島原子力発電所で放射能漏れ事故。
  • 4月10日 – 台湾関係法が制定される。
  • 4月25日 – アメリカ台湾協防司令部廃止と在台米軍撤退。
  • 5月4日 – イギリス、保守党の党首サッチャーが首相に就任(先進国初の女性首相)。
  • 5月19日 – フォードが東洋工業へ資本参加を決定。
  • 5月25日 – アメリカン航空191便墜落事故
  • 6月7日-10日 – 欧州議会議員選挙の投票が実施され、欧州議会初の直接選挙が行われる。
  • 6月18日 – ウィーンでの米ソ首脳会談で、SALTII(第二次戦略兵器制限条約)が調印される。
  • 6月28日 – 第5回先進国首脳会議(東京サミット)開催。
  • 6月30日 – 梅雨前線による豪雨で西日本から東北地方にかけて被害。死者・行方不明者27人、負傷者27人。
  • 7月1日 – ソニーがヘッドホンステレオ「ウォークマン」を発売。
  • 7月12日 – ディスコ・デモリッション・ナイト
  • 7月16日 – イラク、バアス党のサッダーム・フセインがイラク大統領に就任。
  • 7月20日 – ジュネーヴで「インドシナ難民問題国際会議」開催。
  • 9月7日 – アメリカのスポーツ専門チャンネル・ESPNが開局。
  • 9月20日 – 中央アフリカ帝国にてフランス軍による無血クーデターにより帝政が崩壊。
  • 9月22日 – アメリカの人工衛星「ヴェラ・ホテル6911」がプリンス・エドワード諸島付近で「二重の閃光」を探知(ヴェラ事件)。
  • 10月1日 – アメリカ合衆国の海外領土であったパナマ運河地帯が廃止され、パナマに施政権を返還。
  • 10月7日 – 元韓国中央情報部(KCIA)部長の金炯旭、フランス・パリで失踪。
  • 10月26日 – 天然痘が根絶とWHOが宣言。
  • 10月26日 – 韓国の朴正煕大統領暗殺。
  • 11月4日 – イランアメリカ大使館人質事件。
  • 11月18日 – 第1回東京国際女子マラソンが開催される(国際陸上競技連盟初公認の女子マラソン)。
  • 11月20日 – アル=ハラム・モスク占拠事件。
  • 12月12日 – 韓国で粛軍クーデター、全斗煥少将が軍の実権を掌握。
  • 12月24日 – ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻。

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