六次の隔たりとミュージック・スモールワールド

「六次の隔たり」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

英語だとSix degrees of separationと呼ばれるのですが、ことの始まりはイエール大学の心理学者スタンレイ・ミルグラムによって1967年に行われた実験です。その実験を簡単に説明すると

まず直接つながりのない相手を「目標」とします。この「目標」の相手に宛てた手紙を、まずは自分の知り合いに宛てて送ります。その際「目標」の相手を知っていそうな、できるだけ相手に近そうな知り合いを選びます。その後、知り合いのそのまた知り合いに同じように転送してもらいます。そうして「目標」の相手を直接知っている人にたどり着くまで、次々と知り合いへの転送を繰り返して、最終的に何人を経由して目標に到達するかを検証する、というものでした。

その結果として、160通の手紙のうち42通が実際に【目標の相手】の元へ届き、そして届くまでに平均で約6人の人を経ていた、ということです。

この実験をきっかけとして、人間の社会は巨大なようで実は非常に狭く、知り合いの知り合い・・・というように繋がりを辿ってゆくと世界の全ての人はたったの6人程度で繋がってしまう、という仮説が生まれました。この仮説は「スモールワールド現象」とも呼ばれています。

この現象は、我々が社会生活を送る上での「世間は狭い」という経験的な実感と合致しており、世界中がたった6人で繋がることに驚くと同時に、確かにそのくらい世間は狭いかもしれない、という実感も呼び起こします。

全世界が実際に6人で繋がるかどうかを検証することは困難ですし、先のミルグラムの実験も理論的な面では様々な問題点の指摘や批判を受けました。しかし、スモールワールド現象を現実に検証する実験はその後もさまざまに行われており、いずれにおいても人間社会の狭さを実証する結果となっています。

近年になってこのスモールワールド現象に注目しているのがソーシャル・ネットワーク界隈です。例えば、Facebookとミラノ大学との共同研究で全Facebookユーザーを対象に調査を行ったところ、任意の二人のFacebookユーザーは、平均で4.7人の知り合いを仲介して繋がることが実証されました。日本ではMixiが同様の調査を行って、ほぼ同様の結果を得たそうです。

また、映画界において、俳優のケヴィン・ベーコンと共演した人が1、その人と共演した人が2・・・という具合に付けていく番号を「ベーコン数」として調査したところ、映画データベースIMDbに登録された430万人のうち8割を超す176万人が、ベーコン数3以下で繋がることが確かめられました。


さて、ここからはミュージックシーンの話です。映画界が小さく狭い世界であるように音楽界も小さい世界であることは明白です。実はこのミュージックシーンの「スモールワールド」を目に見えるグラフ化するという発想から生まれたのが ミュージック・ルーツグラフです。

ミュージック・ルーツグラフでは、音楽アーティストの繋がり=共演・協業・セッション・フューチャー・バンドのメンバー・師弟関係に加えて、音楽性の影響関係(継承関係)をグラフィック表示することができます。

ミュージック・ルーツグラフで見てみると、実際のところ近現代の音楽シーンは全体でも本当に小さな世界です。バロックの時代から現代のヒップホップまであらゆるジャンルの20万人を超える音楽アーティストがデータベース化されていますが、それらのアーティストは平均すると3人程度の「関連」で繋がっているのがわかります。

*現在公開を予定しているデモ・バージョンでは20万人のうち約4万人が参照できます。

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