現代ロック3大ギタリスト(Music Roots Graph)

ジョン・フルシアンテ、ジョン・メイヤー、デレク・トラックスを「現代3大ロックギタリスト」と呼ぶのをしばしば見かけます。調べてみるとどうやら2007年2月のローリングストーン誌の特集がネタ元でした。2007年の時点でフルシアンテは37歳、メイヤーは30歳、トラックスにいたっては28歳とまだ若手の範疇です。次世代を担う若手の3大ギタリストという選出だったのだろうと思われます。2009年になって日本のギターマガジンが、この特集を取り上げて「現代3大ロックギタリスト」という形で日本でも広く知られることになったようです。

そこで「Music Roots Graph」の紹介を兼ねて、この3大ギタリストの相関関係とそれぞれの音楽的ルーツをRoots Graphで探索してみた様子をデモビデオにしてみました。

「Roots Graph ルーツグラフ」のデモビデオ
このデモビデオで紹介しているルーツグラフは、以下のリンクで実際に触って動かすことができます。試しに遊んでみてください。⇒ ルーツグラフのデモ 
グラフアプリの中ではルーツを遡る他にも色々な機能を利用できます。⇒グラフの使い方ガイド

デレク・トラックス

「Roots Graph」によれば、トラックスはオーソドックスなブルース系のルーツの他、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン等ジャズ系の影響も受けているようです。「ギタリストとしての革新を目指すなら同業者、つまり他のギタリストの演奏だけ聞いていてもことは足らず、ギタリスト以外の演奏からインスピレーションを得る必要がある」という発言をしているのですが、実はフルシアンテがほぼ同様の発言をしています。

トラックスの直接のルーツは明らかにデュアン・オールマンです。オールマンはスタジオ。セッション・ギタリストとして多彩な活躍をした人で、「いとしのレイラ」があまりにも有名ですが、他にもClarence Carter, King Curtis, Aretha Franklinをはじめ数多くのアーティストのスタジオ・レコーディングに参加しています。このキャリアが培ったオールマンの音楽性の多彩さをトラックスはそのままに引き継いでいるように見えます。つまり、ブルース・ロックの極めて濃い血を引き継ぎながら、その音楽性はブルース・ロックに留まるものではなく、それを大胆に踏み越えたものです。スライド奏法はギターという楽器の制約をある程度取り払うかのような自由さを持っていて、トラックスがオールマンから引き継いだ最大のものはこのスライド奏法による「自由」だったようにも思えます。

デモビデオの後半では、トラックスに影響を与えたデュアン・オールマン、エルモア・ジェームス、B. B. キングについて、彼らに影響を与えたアーティスト、つまりトラックスのルーツを探索する様子を紹介しています。例えば、デレク・トラックス << エルモア・ジェームス << ロバート・ジョンソン << リロイ・カーというルーツの系譜が現れています。

⇒Roots Graphによるトラックスの相関図

ジョン・メイヤー

さて、ジョン・メイヤーです。彼は単なるギタリストの範疇には収まらず、ギターが恐ろしく巧いシンガーソングライターであることはご存じの通り。Wikipediaでのタイトルもsinger, songwriter, and guitarisになっています。

メイヤーは1996年に19歳でバークレイ音大に進学そこで藤田トモ氏に師事しています。しかし、バークレイ在学中のメイヤーは次第にギターの演奏から作曲・アレンジの方へ関心が移って行ったようです。ギターマガジンに掲載されていた藤田氏の証言によれば1、進路を迷うメイヤーにバークレイを辞める提案をしたのは師匠である藤田氏自身だったのだそうです。こうした経緯から、単なるブルース・ギタリストではなく幅広い音楽性を備えたアーティストとしてのジョン・メイヤーが誕生します。

  1. ギターマガジン2021年8月号 ↩︎

⇒Roots Graphによるメイヤーの相関図

ジョン・フルシアンテ

トラックスとメイヤーは、比較的オーソドックスなブルース系の音楽的ルーツを持っているのに対して、フルシアンテのルーツは少し変わっています。フルシアンテのギタースタイルは明らかにジミ・ヘンドリックスやエディ・ヘイゼルの影響を受けていますが、その他にイエスのスティーブ・ハウやフランク・ザッパなど言わば「変態系」の影響があるようです。さらにはスージーアンドバンジーズのジョン・マッギオークからの影響などポストパンク系への共感も見えて、この天才肌ギタリストの一風変わった音楽性を垣間見ることができます。2019年にレッチリに再復帰してからあらためて人気が高騰しているようで、2023年版の「史上最も偉大なギタリスト」では18位に復帰しています(前回2011年には72位、2003年版では18位でした)。

⇒Roots Graphによるフルシアンテの相関図


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