情報の歴史21【書評】


情報の歴史21 象形文字から仮想現実まで [ 松岡 正剛 ]

簡単に言ってしまえば7000万年前から2020年までの巨大な世界同時年表です。松岡正剛が率いる『編集工学研究所』が編纂したもので、B5、500ページというボリュームがその情報量を物語ります。

初版は「日本の電話100年」の記念事業の一環として、1990年にNTT出版より刊行されました。1996年の増補版が絶版になった後、増補版として1996年〜2020年にいたる25年分の年表を追加して復刊されたものです。

前書きにはこうあります。

本書で「情報」と呼んでいるのは、「人間が獲得し改良し続けてきたコミュニケーションのための全ての手段および内容を指している。

もともと本書の意図は、正確な史料的データベースを提供するという点にあるのではなく、むしろ、関係の発見が次々に連鎖的に喚起されるような、柔らかい編集年表をつくりたい

考えてみれば、個々の歴史的事象は、切り離して個別に見てしまうとほとんど何の意味も持つことができません。地域的な前後左右、時間的な前後の関係性の中にだけ事象の意味が浮かび上がるとも言えます。

見開きは7000万年前から始まって、40万年前、2万年前と次第に細かくなっていき、近現代は見開き2ページで1年を現します。5つあるトラックは時代によって、その時代のテーマによってシフトしますが、東西を跨ぐ世界同時年表であることは変わりません。

翻って音楽をこの本で言う「情報」と考えてみます。。コミュニケーションの手段としての音楽です。音楽史も情報の歴史の一つとして考えてみるわけです。さらには、個々のアーティストや作品を個々に考えるのではなく関係性の中で考え直してみます。

個々の作品を考える場合に「関係性」が重要だ、という話ではありません。「関係性」を仮に断ち切るなら個々の作品には何も残らない、という話です。アーティストについても同様です。他のアーティストとの関係性を断ち切ってしまうと、個々のアーティストはほとんど何も持っていないかもしれません。

言い方を代えて敢えてややこしい表現をとると、個々のアーティストが持っている価値は何一つとして彼(彼女)に内在していない。すべての価値は他のアーティストとの関係として外在している。と言えるかもしれません。

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